ザ・移動革命

2021年3月25日

»著者プロフィール
閉じる

伊藤慎介 (いとう・しんすけ)

株式会社rimOnO 代表取締役社長

1999年に旧通商産業省(経済産業省)に入省し、自動車、IT、エレクトロニクス、航空機などの分野で複数の国家プロジェクトに携わる。2014年に退官し、同年9月に超小型電気自動車のベンチャー企業、株式会社rimOnO(リモノ)を設立。2016年5月に布製ボディの超小型電気自動車”rimOnO Prototype 01”を発表。現在は、CASEやMaaSなどモビリティ分野のイノベーション活動に従事。KPMGモビリティ研究所アドバイザー、東京電力ホールディングス株式会EV戦略特任顧問などを兼務。

なぜWaymoはTeslaの戦略に反対なのか?

(Sundry Photography/gettyimages)

 1月6日、Google系Waymoは自社の自動運転について“self-driving”という表現を一切使わないこととし、今後は”fully autonomous driving”の呼称に統一すると表明した。

 日本語ではどちらも自動運転として訳されているが、Waymoではself-drivingをレベル1~3の運転支援システムのことを指す用語として位置づけ、ドライバーによる介入を必要としないレベル4~5の完全自動運転のことをfully autonomous drivingと位置付けることにしたようだ。

Google系Waymoは自社の自動運転をSelf-drivingとは呼ばないと宣言(出典:Waymo HPより)

 WaymoのCEOであるKrafcik氏は雑誌へのインタビューにおいてTeslaのFSDを非難している。運転支援システムの改善を続けることでいずれは完全自動運転を実現できるというのは妄想だとしたうえで、現在のTeslaの戦略のままでは完全自動運転は絶対に実現しないと述べている。

 その主張の背景にはWaymo自身の体験がある。

 2010年代のGoogle時代から自動運転に取り組んできたWaymoだが、当初は運転支援システムを改善するところから完全自動運転の実現を目指していた。しかし、運転支援システムがある程度問題なく稼働していることが分かるとドライバーはあっという間にシステムを信用してしまい、携帯を見る、化粧をするなどの行為をするようになってクルマの運転を監視しなくなってしまうことが分かってきたという。

 一般のドライバーは運転支援システムの完成度が高ければ高いほど運転の注意力がより散漫になってしまい、いざというときに運転に介入できなくなってしまうことが明らかになったというのだ。

 そのため、Google/Waymoのチームは、一般のドライバーによる運転介入を一切辞めて訓練されたプロのドライバーが運転席に座る“ロボタクシー”を実現させる方向へと大きく戦略を大転換させたという。その結果が昨年10月23日の記事(『無人タクシーで圧倒的に先行する米国に日本勢が勝てない理由』)でも紹介したアリゾナ州フェニックスにおけるロボタクシーサービス“Waymo One”の提供へとつながっている。ちなみにWaymoはサンフランシスコ市内でも今年の2月17日よりロボタクシーの試験的サービスを開始している。

サンフランシスコ市内でロボタクシーの試験的サービスを開始したWaymo(出典:Waymo HPより)

 FSDを推し進めてロボタクシー化を目指すTeslaに対して反論を唱えているのはWaymoだけではない。実は規制当局もTeslaの自動運転戦略に対して異を唱えようとしている。その象徴としてご紹介したいのが2月1日に米NTSB(国家運輸安全委員会)が発出した文書だ。

関連記事

新着記事

»もっと見る