野嶋剛が読み解くアジア最新事情

2021年3月30日

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野嶋 剛 (のじま・つよし)

ジャーナリスト

1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com

民進党支持者の多い南部が生産拠点

 台湾では、パイナップルの産地は、南部の屏東県(30%)、高雄市(14%)、台南市(14%)などで、基本的に政権与党民進党の強い地域と重なっている。南部の農家に打撃を与えることで蔡英文政権を揺さぶる狙いもあるとみられた。中国への輸出は、輸出パイナップルの97%に達する。大口顧客の突然の禁輸に、生産者には動揺が広がった。

 それをカバーすべく、台湾政府は国内消費の拡大と輸出振興を打ち出した。呼応するように台湾パイナップルの購入運動が起きたのが日本だった。中国も日本で台湾パイナップルの消費ブームが起きるとは想像できなかっただろう。日本ではちょうど、台湾から巨額の義援金を震災支援で送られた東日本大震災から10周年を迎えたタイミングで、台湾への「恩返し」の機運が高まっていたのも大きかった。

フリーダム・パイナップルを台湾は呼びかけ

 今度も台湾が中国から、あるいは日本が中国から、禁輸などの圧力を受けた時に、同じような日台連携の対抗策が生まれるかもしれない。中国のやり方はWTOのルールにも反している可能性がある行動だが、現状では止める有効な手立てがない。台湾の呉釗燮外交部長は、オーストラリア・ワインが「フリーダム・ワインと呼んで世界で消費拡大を呼びかけたことを念頭に、「台湾を支持し、フリーダム・パイナップルの名の下に団結を」と呼びかけた。

 現実に、フルーツと政治は密接な関係がある。それはフルーツが国家間の貿易で取引される「換金作物」であり、輸出国が外貨を稼ぎ出す重要な「輸出品」になるからだ。幸い、当面中国の輸出分をカバーするだけの台湾国内の消費と日本への輸出増などが確保できたとみられている。台湾側は一息ついた形だが、問題がこれで解決したわけではない。特に今後ポイントになるのは台湾パイナップルの輸出競争力の問題だ。

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