輸出での対中依存脱却難しく
もう一つの問題は、台湾経済の対中依存の問題である。
中国は、関係改善を進めた国民党の馬英九政権時代(2008-2016)から、台湾産優遇政策によって農産物や水産物の輸入を増やす政策を進めた。2008年に中台直行便のフライトが開通し、2010年には両岸経済協力協定(ECFA)が締結され、台湾の対中の農産品輸出が急拡大していった。
もともと台湾の農産品輸出は、日本が第一位だったが、2013年には中国が日本を追い抜いた。中国の消費市場は拡大を続けており、購買力は年々高まっている。台湾側には小さくないメリットとなり、フルーツは中台関係改善の象徴的な存在となった。パイナップルも台湾の対外輸出の90%以上を中国市場が占めるようになった。
2016年に誕生した蔡英文政権は、東南アジアや南アジアとの貿易拡大を念頭に「新南向政策」を打ち出して対中依存の解消を目指したが、フルーツなどは競合相手になる国も多いうえ、価格差の問題もあって、依然として対中依存は解消できないままだった。その実態がこのパイナップル騒動によって明らかになった形である。
国際的に孤立する台湾がFTAなどのネットワークに中国の圧力で入れないことも響いている。台湾のパイナップルは日本では17%の関税がかけられ、価格を下げることも容易ではない。また、冷凍技術が欧米の輸出には求められるが、設備の整備も遅れていると言われる。すぐ隣の中国への輸出があるので、業界で努力を怠っていた部分もあった。