2022年6月30日(木)

日本の漁業は崖っぷち

2012年10月19日

»著者プロフィール
著者
閉じる

片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社社員

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会) 『日本の漁業が崩壊する本当の理由』『魚はどこに消えた?』(ともにウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著、『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

 なぜ、漁業に対して税金が増えたのか? その答えは簡単で、「儲かり続けている」からです。アイスランド政府としては、「税金は取れるところから取りたい」と考えるのは当然のことかと思います。

 一方で、日本の漁業や漁協は残念ながら、政府からの補助金なしでは運営が厳しいケースが多いかと思います。これは大きな違いです。補助金についてアイスランドの水産学者に聞いたところ、「補助金? むしろ漁業者は税金を納める方だよ!」と即答されました。

 ノルウェーの場合もを見ていただくと一目瞭然なのですが、1980年代には補助金頼みだった水産業は、資源管理政策に成功し、今では実質補助金は不要になっています。資源が増えて補助金が減ったのです。日本は、資源管理政策の違いにより、資源が減って補助金が増えるという、最悪の結果が続いてしまっているのです。

 アイスランドの漁業は、儲かり続けているがゆえに、税金が上がるという事態になりました。買付け先の社長は「今年も過去最高益を更新だ」と、ここ2~3年は、毎年ニコニコしていたのですが、「これでは品質向上のための投資もできなくなるし、雇用も継続できない」と、今回の増税には怒り心頭です。キロ当たりの金額は安く見えますが、数量が多いので、意外と金額は大きくなります。計算は複雑で、魚種毎にkg当たりの税金は異なるのですが、漁船の売却と50人の漁業者を解雇したと言っていましたので、影響は大きいと思われます。

  日本の漁業が儲かりすぎているので、税金が増やされる? という場面は、果たして想像できるでしょうか? 儲かりすぎているために「増える税金に怒る」、そんな嬉しい悲鳴が上がるのも、ITQ(個別割当て制度)のおかげなのです。

 前述の大手の水産加工業者はこう言っています。「個別割当て制度には、多くの国民が注目している。それは、制度に基づいて漁業をしている漁業者が儲かっているからだ。漁業者の収入は、ほぼ100%漁獲高に反映される。このため、漁業者の目は「量から質へ」と移る。その結果、漁獲高が増加する。また、同じ仕事している限り、ノルウェーも含め外国人の給与が安いということもないと」

持続可能な漁業・アイスランドでの資源管理例
カラフトシシャモ

 儲かっているアイスランドの代表的な輸出水産物であるカラフトシシャモの資源管理を説明します。

関連記事

新着記事

»もっと見る