持続可能な漁業にするためには、どれだけ産卵する親魚を取り残すべきか、この1点が重要なのです。日本で売られているシシャモは卵を一杯抱えた♀がほとんどですが、♀ばかりで泳いでいるわけではありません。♂は選別機で分けてロシア・東欧向けに冷凍して販売され、♀は日本が買付けて食卓に上っているのです。20年前には、♀は日本向け、♂は、価格が安いフィッシュミール向けでしたが、今日では♂もロシア・東欧が食用とするようになっています。
また、フィッシュミール価格自体も、アトランテックサーモンを始めとする世界の養殖水産物の生産が、上位10カ国では、日本を除いて右肩上がりに増大していく中、価格が上昇しているのです。水産資源が正しく管理され、持続的であれば、水産業は持続的に儲かる構造になるのです。
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図1は、インターネット上で公開されている、アイスランドの調査船2隻がカラフトシシャモの魚群を探索している様子です。資源量を測って、漁獲してよい数量を発表します。産卵直前の卵をたっぷり持った♀のカラフトシシャモを大量に獲ってしまえば、問題かというと、必ずしもそうではありません。サバやアジとは異なり、日本のサケと同じで、産卵後は死んでしまいます。その前に漁獲しないと価値はありません。
アイスランドでは、産卵用の魚群(spawning stock)として40万トンの資源を残します。40万トンを超えた資源が確認されれば、それが漁獲枠となります。例えば110万トンの資源が確認されれば70万トン(110―40=70)の漁獲枠となります(2012年のケース)。逆に30万トンしか発見されなければ禁漁となります。ただそれでも調査の目的で1万トン程度の漁獲を行います。産卵目的で接岸した魚を獲る場合でも、このように厳格に管理していけば資源は継続していくのです。
水産物を資源ごとに科学的に測り、「今年はこれだけの資源があるので、漁獲枠はこれだけ」という内容をオープンにしてその結果をトレースしていくのです。資源量が少ないときでも、我慢して回復を待てばよくなることも立証され、国民の理解と関心が高まっていきます。乱獲をすれば、世論の非難を浴びることになります。
日本の科学力を以ってすれば、本来であれば世界最先端の資源管理ができるはずです。より多くの国民が日本の水産資源に関心を持ち、国際的な感覚を併せ持つ多くの優秀な人材が水産業に従事し、水揚げを持続性のあるものにできれば、日本の地方は再生できるでしょう。