2024年4月25日(木)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年5月13日

支持層拡大とは逆方向

 チェイニー議員は「前回の米大統領選挙は盗まれていない」と訴え、「不正はなかった」という立場をとって、トランプ批判を繰り返しています。これに対して、トランプ前大統領はチェイニー議員を「戦争屋で愚か者」と呼び、ナンバー3にエリス・ステファニック下院議員(東部ニューヨーク)を強く推しています。

 トランプ氏は自分を弁護してくれるステファニック議員を称賛し、「(チェイニーよりも)はるかに優れた選択だ」と述べて支持表明をしました。マッカーシー院内総務に圧力をかけて決断を迫ったのです。中間選挙においてトランプ氏から資金と票で全面的な協力を得るためには、共和党下院議員総会議長の座からチェイニー議員を引きずり降ろす必要があります。

 ついに、マッカーシー氏はチェイニー氏に関して「自信を持てない」と語り追放を決めました。

 しかし、チェイニー追放には懸念材料があります。マッカーシー氏がチェイニー氏を共和党指導部からパージしても、共和党は中間選挙での票獲得において影響を受けないのでしょうか。

 ブッシュ政権のカール・ロブ元上級顧問は、「共和党は中間選挙で浮動票を獲得できないだろう」と予測しました。筆者の予想では共和党は勝敗の鍵を握る郊外の女性票も逃す可能性があります。チェイニー氏は保守主義を代表する女性議員の一人だからです。

 となると、共和党指導部からのチェイニー議員追放は、トランプ支持者以外の票獲得を困難にする結果を導くことになります。マッカーシー院内総務の決定が、同党上院の選挙戦の行方にも影響を及ぼす可能性が出てきます。

 結局、共和党は「トランプ依存」という高いリスクを選択したと言えます。

  
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