最近はアジア系も標的
アメリカにおけるおぞましいヘイトクライムは、これにとどまらない。
白人警察官が46歳黒人の首を押さえつけて死亡させたミネソタ州ミネアポリスの事件は、2020年5月の発生直後、連日、日本のメディアをも賑した。
偽札使用の疑いをもたれた犯人が、逮捕される際、膝で10分近く圧迫され、「息ができない」と訴えたにもかかわらず無視され、窒息死した。この被害者も銃などは持っていなかった。
この事件は「Black Lives Matter」(黒人の命は大切だ)の抗議運動となって世界中に拡散した。
加害者の警察官は21年4月、有罪評決を受け、6月に量刑の言い渡しが行われる。
21年3月には、ジョージア州アトランタで、マッサージ店3軒が襲撃され、アジア系女性6人を含む8人が射殺された。やはり人種偏見にもとづくとみられ、地元検察は犯人の21歳の白人男にヘイトクライム法の適用、死刑の求刑を検討している。
司法省は対策強化打ち出すが
アメリカの民間団体の調査によると、2020年3月ー21年2月のアジア人に対するヘイトクライムは3800件、21年1、2月の2カ月だけで503件にのぼる。
ニューヨークなど主要16都市での20年のアジア系住民標的の犯罪は19年比で2・5倍という調査もある(2021年3月18日付日本経済新聞)。
バイデン大統領は3月のジョージア州での事件後、「アジア系の人々の懸念は理解できる」と述べ、ハリス副大統領も「ヘイトクライムは増加している。いかなる形の犯罪に対しても沈黙すべきではない」と、それぞlれ事態を深刻に受け止めていることを明らかにした。
3月の事件後、ガーランド司法長官は、ヘイトクライムに関するデータ収集を改善して、消極的といわれたトランプ前政権時の方針を見直すよう事務当局に指示したといわれる。FBIに加え、各州の捜査機関との連携を強化する。
1月20日のバイデン大統領の就任演説の核心も「分断の修復」だった。
根強い人種偏見という闇を雲散霧消させることができるか。
人種差別を禁じた公民権法が1964年に成立してから半世紀以上。その実現への道はなお遠いようだ。
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