ガラガラだった飛行機が一変
筆者が日本から米国に戻ったのは5月14日だが、飛行機は台湾経由だった。日本からの直行便があまりにも高額で、台湾経由だと価格がおよそ3分の1だったためだが、コロナ禍以降は国際便の飛行機は常にガラガラで、エコノミークラスでも一列に一人、という状態が続いていた。
ところが今回、台湾からロサンゼルス行きの飛行機は驚くくらい人が乗っていた。さすがに隣の席は空けるようにしてあったものの、1人置きでほぼ一杯の人が機乗していた。台湾乗り継ぎで東南アジア各国からの人が目立つ印象だった。
さらに驚いたのは飛行機を降りた時だ。空港の建物と飛行機をつなぐ通路にずらりと車椅子が待機していた。今まであれほど多くの車椅子が並んでいるところを見たことはない。飛行機を降りたところからほぼ建物に入るところまで、車椅子の行列ができていたのだ。
機内で筆者の1人置いて隣にいたのはマレーシア人女性だったが、彼女は米国永住権を持つものの、あまりにコロナ感染者が増えていたため一旦帰国していた、という。今回米国に戻ったのはコロナが落ち着いて、ワクチンも接種できるからだ、と言っていた。
恐らく同じようにワクチン接種が目的で訪米する人が急増しているのではないだろうか。あの車椅子の数から考えても飛行機には大勢の高齢者あるいは基礎疾患を抱える人が乗っていたはずだ。自国で中々ワクチン接種が進まない場合、多少のリスクを犯しても米国で受けるほうが早い、と考える人がいても不思議ではない。もしかしたらそういうワクチン接種を目的としたツアーが組まれている可能性もある。
米国の入国審査も実に簡単だ。飛行機に搭乗前にPCR検査を受け、陰性である証明と米国CDCに対し行動規約を守る内容の誓約書を提出する必要はあるが、入国時には特に何も求められず、あっけないほど簡単に入国できた。空港のある州により、カリフォルニアの場合はロサンゼルス空港独自の誓約書も必要だが、これはオンラインでの提出のみ。内容も入国後10日間は自宅待機する、というものだ。
こんなに簡単に入国できて、しかも旅行者である、などの身分を問わず誰でも無料でワクチン接種できるのだから、訪米者が増えないほうがおかしいとも言える。日本の場合は帰国した時の制限が大きいのでワクチン接種を目的としたツアーなどは組みにくいだろうが、こうした人々を(筆者も含めて)受け入れてしまえる米国の恵まれたワクチン事情は羨ましい、としか言いようがない。悪評高かったトランプ政権ではあるが、製薬会社に多額の援助を行いワクチン開発を後押しした、という点だけは高く評価できるのではないだろうか。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。