EUの政策執行機関である欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン会長が、「ワクチンの2回接種を完了した人に対し、早ければ今夏からEU加盟国全27カ国への旅行での入国を認める」と発言した。対象となるのはEUが承認しているワクチンを接種した証明のある人だという。
これを受け、米国では「夏にも欧州旅行可能か」という報道がなされているが、米CDC(疾病予防管理センター)は「少なくとも欧州の一部にはまだ旅行を推奨しない」という姿勢を打ち出した。推奨しない国にはイタリア、ギリシャ、スペイン、EUではないが英国も含まれている。これらの国、特に英国は米国以上に接種率が高いのだが。
一方でEUの旅行客受け入れについてもはっきりしない点は多い。時期が夏、といっても具体的にいつ頃になるのか、ワクチン接種の証明について国際的な基準を求めるのか、などだ。米国では接種完了者に証明カードを配布しているが、これがワクチンパスポートとしてEUでも認められるのか、などは現時点で不明だ。
また、ワクチン接種とコロナ感染者の減少についての因果関係も現時点では不明な部分が多い。例えばEU内ではフランスがワクチン接種率30%弱とイタリアとほぼ同率にもかかわらず、1日の感染者が3万人を超える状況が続き、4月に入り厳しいロックダウンを行った。現在緩和に向かっているものの、感染者はまだ2万人を超えている。
ミシガン・ショック
米国内でも同様だ。ワクチン接種少なくとも1回を終えた人は人口の半分近くに達し、現在ではすべての州で16歳以上の接種が行われている。それによりコロナ感染者は激減した、とされ経済再開を目指す州が多いが、ミシガン・ショックと呼ばれる現象が注目を集めている。なぜかミシガン州で感染者が急増しているのだ。
理由として考えられているのが、英国型変異株の流行だ。4月7日までの時点で米国内で見つかった同変異株の実に14%以上がミシガン州で発見されている。一方でワクチン接種率が6割に迫る英国では感染がかなり抑えられている、などまだコロナには謎の部分も多い。ミシガン州知事が「ワクチン接種が順調に続けば夏には規制を緩和できる」と強気なのも、英国やイスラエルの例を見ているためだろう。