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2021年1月28日

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(RoschetzkyIstockPhoto/gettyimages)

 バイデン新大統領が本格的なEV化に向けて、まず政府車両の全面EV切り替えという大胆な方針を打ち出した。政府が使用する公用車は軍用、郵便車両などを含めるとおよそ65万台。これをすべてEVにすると、かかる費用は200億ドルに上る、とも言われている。

 もちろん今すぐにすべてをEVにするわけではなく、順次置換していく、という意味ではあるが、一方でバイデン大統領は「国産のEV」へのこだわりも見せている。

 現時点で国産のEVと呼べるのはテスラ、リビアン、ワークホースなどの他、GMとフォードが出すEVシリーズなど。しかしまだ未発売のものも多く、それぞれの公用車の目的などを考えるとすべてをEVにするのは今回の大統領期間の4年をかけても不可能そうだ。

 まず、もっとも実現がたやすいのは郵便車両だろう。多くが小型のバンタイプの車両を各家庭への配達に使っている。郵便局では昨年の時点で18万台の新規配達車両をEVとし、今年中に発注する、としていたがその決定はずれ込んでいる。

 EVバンを作っているのはワークホース、チェンジ、GMが今回のCESで発表したEV600など様々な会社がある。しかしGMはEV600をカナダの工場で生産する、と発表したばかりでまだ実車はない。ワークホースは大手物流のUPS、DHLなどへのEVバン納車の契約を取り付けているが、今年生産予定は1800台、と郵便局に回すほどの余力がない。リビアンはアマゾンからEVバン10万台の発注を受けており、それを実現するだけで手一杯の状況だ。

 しかもバイデン大統領は「バイ・アメリカン」の大統領命令に署名し、EVメーカーへのハードルを上げている。これまで政府が公用車として購入すればそれはアメリカ製品と認定されていたが、今後はパーツの国内生産比率などが厳しくチェックされる。例えばテスラのように中国への外注を進めていると、国産車として認定されない恐れがある。

 もちろん世界の三大バッテリーメーカーと呼ばれるパナソニック、LG、CATLが米国内で生産を始める、などの方法で国産率を高めることは可能だが、LGはGMとの合弁工場建設を発表したばかり、パナソニックも現存するのはネバダ州のギガファクトリーで、今後需要が急増すると考えられるEV用バッテリーを国内で賄うのは難しい。

 一般車両でも、現時点ですぐに購入できるのはテスラ、GM、日産など少数のメーカーだ。日産の場合米国内で生産組み立てを行わないと国産とは認められないので、幅はより狭くなる。テスラは今年はセミトラックやサイバートラック、モデルYの生産を開始する予定で、すでにかなりの受注が入っているためエキストラの生産が可能かどうかは疑問だ。GMのボルトは在庫余りが伝えられているが、それでも政府公用車すべてをまかなえるわけではない。

 こうした背景を考えると、バイデン大統領のEV化計画はかなり実現困難な目標と言えるだろう。順次置換と言っても、まだ車両年数が若く使える車を売り出して(政府公用車はオークションで一般に販売されるケースが多い)新たにEVを購入することへの批判も噴出するかもしれない。

 その上、大量のEVを公用車として稼働させるためには充電ステーションの充実も必要だ。バイデン政権は全米に55万箇所の新たな充電ステーション建設を打ち出しているが、これも実現するまでには時間がかかる。

 また公用車のEV化と同時に、国民がガソリン車両をEVにに買い換えることを推進するインセンティブの強化も打ち出している。現在連邦政府では7500ドルの税金還付を行っているが、税金還付という形ではなく購入時の現金割引などの思い切った手段を使わないと、一般へのEV普及はまだまだ難しい。政権ではインセンティブの内容についてはまだ具体的な策を打ち出していない段階だ。

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