2024年11月5日(火)

From LA

2021年1月22日

ジョビィ社のeVTOL

 今年のCESでGM(ゼネラル・モータース)がデザインコンセプトとしてではあるが、空飛ぶ車を出したことが話題になった。キャデラックブランドのもので、上下に大きなローターが合計4つ付き、1人乗りで自動運転で目的地まで空中を移動する。

 eVTOL(電動垂直離着陸機)は空飛ぶ車の大きなトレンドであり、離着陸に場所を取らないことから現在開発されているもののほとんどがこの形式だ。空飛ぶ車には、陸上走行時には翼を折りたたみ、飛ぶときにボディに収納された翼が伸びる、というタイプのものと、元からプロペラがあり陸上走行を想定しないものがあるが、eVTOLは後者だ。

 空飛ぶ車、というよりは人を乗せられる大型ドローンと言った方が良いようなデザインだが、これが実現するかどうかは分からない。まずこの大きさで本当に人を乗せて飛ぶことが出来るのか、という疑問がある。GMでは時速90キロで移動できる、としているが、デザイン的にやや不安定で安全面は大丈夫か、と思わされる面もある。

 例えば昨年のCESでは現代自動車がウーバーの空飛ぶタクシーのために開発したS-A1が発表されたが、4人乗りでかなり大型だった。小型セスナ機程度の大きさがあり、やはりパイロットに加えて4人を乗せるためにはこれくらいの大きさが必要なのだ、と思わせられる。こちらはプロペラの付いた小型航空機とヘリコプターの中間のようなデザインで、空飛ぶ車、というイメージとは少し違うかもしれない。

 一方でソニーが自社のEVであるVision Sをやはり自社制作のドローンが空中から撮影する、という映像を発表したが、高機能のドローンというところに意味がある。自動で走行するドローンは、サイズさえ大きくすれば空飛ぶ車として利用することも可能となる。

 GMは空飛ぶ車と合わせてキャビン式の自動運転用車両のコンセプトも発表した。これも決して目新しいものではない。自動運転には運転席が存在しないため、移動するリビングあるいはオフィスのような形態の車両となるのは当然だし、他社も同様のコンセプトをこれまでに発表している。

 つまり形態はどうであれ、自動運転という未来を見据えた時、地上と空、という2つのアプローチが必要となる、ということをGMは改めて強調したことになる。

 陸か空か、というのは自動運転、自動デリバリーなどを考える時、興味深い問題だ。例えばアマゾンはドローンによる自動デリバリーとEVバンとデリバリーロボットを組み合わせた地上での方式を併せて開発している。どちらもEVバンのようなハブが必要で、そこからラストマイルと呼ばれる実際の届け先への最終的なデリバリーをドローンなりロボットが行うことになる。

 空中での移動が有利な点は、陸上のような様々な規制や障害が少ない、という点だ。信号や歩行者、他の車など、陸上の自動運転を実現させるにはクリアすべき点が多い。そしてどれだけ精度を上げても、やはり事故は起こり得る。

 その点空中での移動は、固定のルートがないため、比較的スムーズな移動が可能だ。もちろん飛行高度、速度などに規制はあるが、他の障害物がない分安全を確保しやすい。ただし落下事故などが起こると致命的になりやすい。

 また空飛ぶ車はコスト面やスペースも普及のネックとなる。現代のS-A1のような乗り物を個人が所有するのは難しいだろう。GMのeVTOLでも通常の車と比べるとかなりの大きさになるはずだ。

 コスト面では、ウーバーがウーバー・エレベートと名付けて進めていたロサンゼルスでの空港から運営する空飛ぶタクシー事業が、昨年12月カリフォルニアのジョビィ・アビエーション社に売却された。ウーバーはそれに先立って自動運転部門もオーロラ社に売却している。

 特にコロナによって打撃を受けたウーバーにとって、2023年からの実現を目指していた空飛ぶタクシー事業は重荷となっていた。今後ウーバーはジョビィ社に7500万ドルを投資、またウーバーのアプリをジョビィ社が使うことにより、顧客が陸上でも空でも同じアプリでスムーズに移動できることを目指す。


新着記事

»もっと見る