2月1日、米ベタービジネスビューローが「ソーシャルネットワークなどにワクチン接種証明書の写真を掲載しない」よう、異例の勧告を出した。ワクチンを接種すると証明カードが発行されるが、氏名などの個人情報が掲載されているため、ヘイトクライムにつながる可能性があるためだという。
もちろんビジネスビューローでは直接にヘイトクライムに言及しているわけではない。個人が特定されやすいため、ソーシャルネットワークのセキュリティ設定が低い場合、詐欺などのターゲットになりやすい。また写真を掲載することで偽のカードが作られ販売される危険性がある、としている。
しかし実際にはワクチン接種を巡る不公平感が高まっており、白人の接種率が黒人に比べて高いことが問題視されている。そのためカードの写真を白人が掲載した場合に反発を呼び、個人が特定されて何らかの犯罪につながる可能性あるのだという。
無料で接種されるはずのワクチンに、なぜ人種間の差が生まれるのか。まず、例えばロサンゼルス郡一帯では現在医療関係者、コロナ患者と接する危険性の高い職業の人(病院関係者、州や郡、市の政府関係者、スーパーなどの生活必需品を扱う仕事に就く人)と65歳以上の住民に優先的にワクチン接種が行われている。一般の人が接種を受けるためにはオンラインで予約し、ほとんどの人がドジャース球場に設置されている大掛かりな接種会場に行く必要がある。
しかしすでに接種を受けた人に話を聞くと、このオンライン予約が非常に混み合っているのだという。希望する日に予約を入れるためには希望日の7日前の日付が変わってすぐにオンラインで予約を入れないとただちに埋まってしまい、順番が回ってこない。家にブロードバンド環境がなければ、予約そのものができないことになる。
また接種は週末も行われているが、平日の方が予約は取りやすい。しかし65歳以上で働いている人の割合が、白人は他の人種に比べて低い。つまり生活に余裕がなければワクチン接種のために時間を捻出することが難しい。またドジャースタジアムに行くには車が必要だ。
こうした経済的背景の違いが、接種率にはっきりと現れている、という。Kaiser Family Foundationでは全米23の州で、人種ごとのワクチン接種率データを追跡調査しているが、それによると例えば白人人口が全体の41%と比較的低いテキサス州の場合、これまでワクチン接種を受けた人の中で白人が占める割合は51%、続いてヒスパニック系が16%、アジア系が9%、黒人は7%だ。同州ではヒスパニックが人口に占める割合が40%と高く、人口対接種率の差ではヒスパニックが最も高いが、黒人は2番目となる。
また黒人の人口比が最も高いミシシッピ州では、黒人人口が38%に対しワクチン接種率は17%。白人は人口比58%に対し接種率は68%。今回の調査ではほぼすべての州で、白人が人口に占める率よりもワクチン接種率が高く、黒人やヒスパニックは人口比に対してコロナ罹患率、死亡率が高く、ワクチン接種率は低い、という結果になっている。