2024年11月25日(月)

解体 ロシア外交

2012年11月5日

 加えて、士官学校、コサック学校、スボーロフ幼年学校を支援し、民族的なスポーツ、調査や歴史のクラブを発展させるべきだとし、このような仕事は「社会・国家的なパートナーシップ」の下でこそ可能になるとも発言しており、そのような思いが新たな局の創設に踏み切らせたと考えられる。 

保守的なロシア
愛国主義的イデオロギーは抗議への「解毒剤」

 そもそも、ロシア人は極めて保守的だと言われており、愛国主義政策は比較的受け入れられやすいかも知れない。

 「ワールド・バリュー・サーベイ」によれば、ロシア人の65%がゲイやレズビアンの隣人に嫌悪感を、33%が外国人の隣人に嫌悪感を示している1 。この調査に携わったハーバード大学のロバート・フォア研究員は、「ロシア人は、民族主義、環境に対する懸念、同性愛者嫌悪などいくつかの問題に関しては非常に保守的である一方、中絶や離婚から婚前交渉、売春にいたる社会問題に関しては、かなり、あるいは極めてリベラルだ。プーチンは、一種の民族主義、軍国主義、外国嫌い、マッチョ文化といった、社会に広く行き渡っている保守主義を選んでいる」と指摘している。この指摘の行間からは、ロシア人の傾向の一面的な部分にしか注目しないプーチン氏の政策には限界があるという見解も見て取れる。

 モスクワのカーネギーセンターの政治アナリストであるニコライ・ペトロフも、政府は政治的な抗議の「解毒剤」として愛国主義的イデオロギーを利用し、保守的な民衆に大きな期待を寄せていると揶揄する。

開かれた都市・サンクトペテルブルクが
「愛国主義と道徳」教育のテストケースに

 だが、現実に恐ろしいのは、こうしたプーチン氏の愛国主義政策は、「清く正しい」生活の促進につながっていることだ。

 プーチン氏の出身地であるサンクトペテルブルクの市議会は、最近、相次いで市民に「清く正しい」生活を強制する法律を導入している。

 最近できた、子供を「有害な情報」から守る法律は、結果的に子供たちが芸術に触れる機会を減らしてしまった。たとえば、サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団は先週、ラフマニノフの交響曲第2番の鑑賞は16歳以上に限定されると発表した。また、近代美術館は、ウラジーミル・ナボコフの小説「ロリータ」に題材をとった芝居の上演を、市民団体の反対で中止せざるを得なくなった。

 そして、「ロシア第2の都市に安眠を」というキャッチフレーズで、午後11時以降の騒音を禁じる法案を可決した。禁止行為には、叫ぶこと、うなること、音を立てて歩くことなどが含まれている。

1:この数字は、米国ではそれぞれ20%、14%;スウェーデンでは4%と3%。


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