なお、調達委では、買取価格の設定において、プロジェクトの事業採算性を評価する際に用いられる内部収益率(Internal Rate of Return、以下IRR)を指標として用いている。FIT先行国のドイツでは税引き前IRRが7%(スペインでは8.5%~10%)程度のようだから、日本は金利差を考えて同5-6%とし、FIT法附則7条の「施行後3年間は特に利潤に配慮する」規定に基づき、施行後3年間は1-2%上乗せした7-8%とすることにした。
そこで、このコラムでは、第2章でファイナンスに関する知識が少ない方でも理解できるよう、IRRに関する必要最低限の簡単な解説を行う(知識のある方は読み飛ばして頂きたい)。その上で、第3章で、未利用木材チップを使用した木質バイオマス発電の買取価格について、調達委で示された資料から再現する。本コラムは、若干テクニカルな内容ではあるが、今後FITの透明性を向上し、効率的な制度形成の一助となることを願っている。
2章: 内部収益率(IRR)とは?
FITを理解する最小限のファイナンス知識
前述したように調達委は、買取価格の設定において、IRRを用いることに決めた。ここで調達委は、各種再生可能エネルギー事業者の業界団体からヒアリングを踏まえて、再エネの種別・規模別等で16区分に分けて、買取価格を査定し、2012年4月下旬に価格案を示した(調達委「平成24年度調達価格及び調達価格に関する意見」のp.22とp.23を参照のこと)。
IRRとは、要するに投資利回りのことだ。発電事業から生まれる新たな利潤(キャッシュフロー)が増えれば増えるほど、IRRは高くなる(投資利回りが高くなる)。これは、将来得られる(と期待される)キャッシュフローの結果をもとに、現時点で発電事業に投資するか否か判断する基準の一つとなる。
将来得られるキャッシュフロー額は、現在の価値に「割り引いて」考える。例えば、金利が5%の場合、現在の1万円は来年には1万500円になるように、現在の1万円は、来年の1万円より価値が高い。来年の1万500円は、金利を考慮すれば現在の1万円と同じ価値である。すなわち、お金が発生する時期を正確に把握することは重要であり、生じる時点が異なるお金を比較したり集計したりする場合には、金利(投資プロジェクトの場合にはIRR)を考慮しなければならない。
ややテクニカルなので説明しよう。初期投資が100万円必要な再エネ発電事業が2つある。事業AはFITによって年間14万円のキャッシュが10年後まで、単純総額140万円得られる。同様に、事業Bは年間25万円が5年後まで、同125万円が得られる。単純総額で収益の大小を比べれば、事業Aの方が事業Bより優れているが、前述したように収益が得られる時期の違い(時間の割引)を考慮すると異なる結果になる。