3章:グリーン発電会津による
キャッシュフロー計算の問題点
では実際に調達委ではどのような議論が行われたのか。木質バイオマス発電に関しては、日本初の未利用材チップのみによる発電所とされるグリーン発電会津(以下G会津)が、「IRR8%では、買取価格は32円/kW時になる」と希望価格を示し、調達委もこの言い値をそのまま認めた(詳細は、G会津が調達委に提出した資料2ページ目、未利用木材を使用した5700kWのデータを参照のこと。またG会津の問題点については、『WEDGE』2012年12月号をご覧いただきたい)。
しかし、この計算は間違いが2点、謎の資本費計上が1点あることによって、仮にG会津が調達委で示した計算諸元が正しいとしても、買取価格は30円/kW時である。なぜ、このような食い違いが生じるのだろうか。まずG会津が調達委で示した資料にそって、説明しよう。
図2は、G発電会津が調達委で示した資料に従って、未利用材チップを用いた木質バイオマスの発電設備1kWあたりに発生する費用を再現した結果である。大きなところでは初期投資額(建設費)が約41万円/kW、毎年の燃料費と運転維持費がそれぞれ約13万円/kWと約2.7万円/kWである。加えて、固定資産税、廃炉費用、収入にかかる事業税がかかる(事業税はこの図では示していない)。
これらの費用を、20年間、毎年得られる販売電力収入で賄う。必要な年間収入は、「IRR8%」を加味しつつ、図2で発生した費用を20年間に均等割すればよい(この考え方は第2章で前述した)。この額を、販売電力量で割って、電力単価(円/kW時)とした結果を図3に示す。これが本来の買取価格で、30円/kW時となる。
G会津が調達委で示した資料に基づく、買取価格「32円/kW時」という計算の主要な問題点は次の3点である。