2022年12月5日(月)

Wedge REPORT

2021年8月24日

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勝股秀通 (かつまた・ひでみち)

日本大学危機管理学部教授

1983年に読売新聞社入社。93年から防衛問題担当。民間人として初めて防衛大学校総合安全保障研究科(修士課程)修了。解説部長、編集委員などを経て、2016年4月から現職。

 (上)「尖閣でいま、何が起きているのか」で危機の現場を詳述したが、今の政治からは、日本の主権が侵害され続けているという危機感は伝わってこない。これでは国民が危機の深刻さを受け止められなくても仕方がないだろう。

コロナで露呈した優先順位の欠如と縦割り行政の弊害

 危機対応は目標(ゴール)を決めて、対応策の優先順位をつけることが基本だ。しかしコロナ対応では、水際対策、感染防止、経済活動の維持、東京五輪の開催といった個別課題に泥縄式で取り組むばかりだった。

 パンデミックという国家的危機を乗り越えるには「感染封じ込め」が最優先であり、早急にワクチンを確保し、必要があれば憲法の緊急事態条項や私権制限の議論をしなければならなかった。例えば、日本でも海外のようなロックダウン(都市封鎖)は可能であり、私権制限に伴う損失補償も法律をつくればいい。その権限、つまり立法権を持っているのは国会議員だけという自覚が全く感じられなかった。今そこにある危機に対し、政治は何をすべきかを見失っていたと言っていい。

 そうした要因の一つは、縦割り行政の弊害だ。パンデミック初期の2020年1~2月、混乱する中国・武漢市周辺からの邦人帰国では、中国との調整は外務省、輸送は国土交通省、入国手続きは法務省、国内での一時隔離は厚生労働省とバラバラで、混乱によって、隔離施設に派遣されていた警察官が自死するという事態に至っている。

 それは感染封じ込めというゴールに向けて最優先されるはずのワクチン接種でも同様だった。ワクチンの調達と接種は厚労省、都道府県など自治体との調整は総務省、ワクチンの運搬・搬送は国交省、さらに大規模接種に自衛隊が投入されるに至って、担当省庁は多岐にまたがり、指揮・命令系統は複雑さを増してしまった。

 こうした過ちを尖閣危機で繰り返してはならない。尖閣危機は「有事」だという認識に立ち、明確な目標(ゴール)を示し、そのための戦略を決め、必要な方策の優先順位を定める。その上で縦割り行政を束ねる政治主導の司令塔機能が必要なのだ。

(下)『平時の自衛権行使に道を拓き、中国に本気見せろ』は2021年8月25日午前6時に公開します。

  
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