2024年11月22日(金)

子ども・家庭・学校 貧困連鎖社会

2012年12月3日

 一番の問題点は、適切な予算措置が取られていないという点であろう。しかし、政府は膨張し続ける就学援助費を抑え込むために、2005年、国庫補助の対象となっていた準要保護者に対する就学援助を一般財源化した。それまでは、要保護者・準要保護者に対する就学援助費の2分の1は国庫補助の対象となっていたが、準要保護者の就学援助の国庫補助はすべて廃止された。 

 国は「一般財源化しても地方交付税の算定基準として予算を交付している」という立場である。しかし、地方交付税の算定額は、720人の小学校で165万6000円、600人の中学校で198万8000円と算定されている。小学校では一人あたり2300円、中学校で約3300円程度(2007年度)であり、クラスの半数近くが就学援助を必要としている自治体があることをみれば、実態とかけ離れているのは明らかである。この算定額では、それぞれの学校・自治体で十分な就学援助ができるはずがない。国家財政が厳しいという背景事情があるのは理解するが、子どもが教育を受けられる権利を守るのは国家としてもっとも重要な責務のひとつであるから、もっと配慮が必要ではないだろうか。

 市町村は一般財源化にどのように対応したのか。

 文科省が行った「平成17年度における準要保護生徒に係る認定基準等の変更状況調査」において、約5%の自治体が所得基準限度額を引き下げるなど認定対象者を縮小したり、支給額を減額したりしたと回答した。例えばある自治体は、就学援助を受けることができる準要保護認定の所得基準は、生活保護基準の1.4倍であったものを、全額支給できる者を1.1倍までとし、1.1倍~1.4倍の所得がある者に対しては給付を引き下げた。最大で75%の引き下げである。

 財政が厳しい自治体では、援助の認定基準が引き上げられる、制度の周知活動がなおざりにされるという危険がある。財政基盤が厳しい自治体ほど、その傾向は顕著になるだろう。厳しい財政事情の中で、自治体が就学援助制度を積極的に活用することは難しい。日本国内のどんな場所に住んでいても子どもが安心して教育を受けられるように、全国統一的な取り扱いが求められると考える。

 
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