2024年3月4日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年9月9日

 タイでは昨年以降、2014年のクーデターで権力を掌握した元陸軍司令官のプラユット首相の退陣を求めるデモが行われてきた。民衆は、プラユット首相の退陣を求めるほかに、軍政下で定められた憲法の改正や、王室改革なども要求してデモを行って来たが、ここにきて新型コロナウィルスの拡大と不十分な政府の対策に対する不満が爆発し、反政府デモの火に油を注いだ形になっている。

警察の反応激化への懸念も

 過去の抗議を振り返ってみると、2006年のクーデター後追放されたタクシン首相を支持した赤シャツ組などの年配の抗議者は、より若く概してよりリベラルな抗議者と協力して暫定軍事政権に反対した。一方、Free Youth やThalufahといった比較的主流のグループは、過去何回も警察と対決してきたが、そのやり方はしばしば、非暴力的な抗議から出発し、その後組織を固めて警察の邪魔をするというものであった。

 こういう形で、民衆の抗議は当初の非暴力的なものからエスカレートし、これを取り締まろうとする警察の反応も激化することがある。それは時として暴力沙汰に発展している。警察が力で取り締まろうとすると、抗議者の側も力でこれに対抗しようとして、事態がエスカレートしてしまう。

 このようなタイの抗議の激化は、その背景に政府の腐敗、軍事政権の継続に対する不満の鬱積があるので、仮に新型コロナウィルスの拡大が、ワクチンの普及などによって封じ込められたとしても、容易に収まりそうにない。タイの社会的不安定は当分の間続くものと見られる。

   
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