他方、米国では、シェールガス革命でロシアに対して決定的に有利な立場に立てるという議論も出てきた他、冷戦的な構図を示す研究者も出てきた。たとえば、テキサス大学エネルギー研究所のタッカー氏は、シェールガスを巡り、世界が米ロの二極に分かれるかのような議論をしている。彼は「米国につくのがウクライナ、ポーランド、バルト諸国、恐らくイギリス。そして、米国が喪失するのが、ブルガリアとチェコであり、フランスは米国のやり方に反発する。ドイツは米ロを両天秤にかけ、ルーマニアを巡っては厳しい対立が起きるだろう」というのだ(http://www.novinite.com/view_news.php?id=141257)。
ロシア天然ガスの「顧客」もシェールガス開発へ
シェールガス開発に乗り出しているのはアメリカだけではない。欧州諸国も開発に乗り出しており、特に、ポーランド、フランス、ウクライナの埋蔵量の多さは特出していて、将来の有望なガス輸出国とも見られている。ここでロシアにとって懸念されるのは、ロシアの天然ガスの「顧客」がシェールガス開発をしてしまうことだ。
フランスは原発依存が高いということもあり、ロシアがシェールガス開発を恐れる対象国の筆頭にあげられるのはポーランドとウクライナだろう。
ポーランドは年間ガス消費量約150億立法メートルの半分以上をロシアから輸入しており、ロシアと歴史的に外交関係が緊張している同国としては、シェールガスにより、ロシアへの依存度を大きく下げたいところだ。ポーランドのシェールガスは需要300年分ともいわれている。国営ガス会社PGNiGは、2012年11月28日に国家の「非伝統的資源の開発促進策」の一環として、2013年に少なくとも10本、最大15本のシェールガス井を掘削する計画を明らかにした。
ロシアにとって重要な顧客であるウクライナも欧州第4位のシェールガス埋蔵量があるといわれており、ロシアからの依存脱却のために、開発に乗り気であった。2012年5月11日には、西部のオレスク鉱区と東部のユゾフスカ鉱区のシェールガス探査・開発パートナーとして、英国・オランダのロイヤル・ダッチ・シェルと米国シェブロンの2社を選定したが、 ウクライナでのプロジェクトはあまりうまくいっていないという報道もあり、今後の進展が待たれるところだろう。その他、リトアニアなど、多くのロシアの「顧客」がシェールガスに熱い視線を注いでいる。
環境問題でロシアの危惧ほど進まない
シェールガス開発~プーチンも安堵?
だが、実際のところ、ロシアが危惧したほど、シェールガス革命は広がっていない。何故か?