「わが社の社員は皆、その農園で『なぜサザコーヒーが旨いのか』を肌で感じる。完熟した果実だけを栽培するために手摘みにこだわり、澄んだ水で洗い、水面に沈んだ身の詰まった果実だけを厳選し、天日干しにする。そうした異国の地での出来事を、知識ではなく〝経験〟として学べる点で直営農園は最高の人材育成の場だ」
事実、コーヒーに関する知識と技術を競い、日本一の「バリスタ」を決めるジャパン・バリスタ・チャンピオンシップでは、直近3大会で、決勝進出6人のうち3人をサザコーヒーの社員が占めるという快挙を成した。
「対価を払うに値するかどうかを最後に判断するのはお客様だ。だが、われわれには、自らの商品がその値段に相当する価値があることを、誠意を込めて伝える義務がある」
「大型店の集客力に頼らない」
街の果物店の経営転換
富士山を背に、駿河湾を正面に構える吉原地区は、古くは東海道五十三次14番目の宿場町として栄えた。かつての賑わいは移ろい、いまや多くの店がシャッターを下ろす吉原商店街の一角に、全国からファンが集まり、行列の絶えない〝果物店〟がある。「杉山フルーツ」(静岡県富士市)だ。
店内に入ると、1玉1万円を超える静岡県産クラウンメロンをはじめ、シャインマスカット、マンゴーといった高級フルーツが所狭しと並ぶ。だが、この店を訪れる多くの客のお目当ては、店主である杉山清氏が開発した「生フルーツゼリー」である。切り出した瞬間の鮮度を保ったかのような瑞々しいカットフルーツが無色透明なゼリーに浮かぶさまは高級感があり、見た目にも涼やかだ。全てが手作りのため休日でも700個が製造数の上限だが、1個500円~1000円といった価格帯にもかかわらず、人気の種類は開店時の行列で売り切れてしまうほどだ。取材当日も、開店から2時間足らずで、陳列棚には既に「完売」の札が並んでいた。
杉山フルーツが現在の経営に至るまで、2度の転機があった。
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