2024年4月20日(土)

ニュースから学ぶ人口学

2021年11月8日

 ポスト・コロナの世界をどのように構築するのかは、人口規模とその分布、年齢構成、世帯のあり方など、人口の状態に大きく関わっている。少しでも早く、できるだけ確度の高い推計を知りたいものである。

中国は2031年から人口減に

 20年には日本だけではなく、米国、中国、韓国、シンガポール、フィリピンで人口調査が行われている。21年には英国(スコットランドは2022年に実施)、カナダ、オーストリアで実施された。これらの国では、まだ日本のような人口減少は起きていない。しかしいずれの国でも、2010~20年の増加率は、それ以前より低下している。

 人口大国中国では、一人っ子政策を改めて、16年から全面的に二人っ子に切り替えられた。それでも出生の増加は一時的で、18年以降減少している。

 国連推計によると中国人口は31年にピークに達したのち、減少に転じるとしている。しかし中国の人口経済学者蔡昉氏は、最近の出生率低下によって、人口減少への転換点はもっと早まり、30年より前になるとしている。

 人口減少はコロナ禍によって加速された側面もあろうが、それだけではない。国連は定期的に世界人口予測(World Population Prospects)を発表している。最新の19年版によると、20年に78億人と推計される世界人口は、2100年には109億人まで増加するとしている。日本人口の減少はとまらないままだが、世界人口は21世紀を通して増え続けるというのだ。

 とはいえ年間増加率はピークの1970年代と比べれば、半減している。2100年に向かって、さらに低下するとされる。言うまでもなく出生率の低下が世界中で進んでいるためだ。

 もっとも人口動向の地域差は大きい。北部アフリカ・西アジア、サブサハラ・アフリカ、オーストラリア・ニュージーランド、オセアニア(島嶼部)、北アメリカでは21世紀を通じて増加し続けるのに対して、早くから減少に転じる地域も少なくない。

 ヨーロッパでは2021年をピークとして、人口減少が進むとされている。その後を、中国、日本が含まれる東・東南アジア(38年)、ラテンアメリカ・カリブ海地域(58年)、インドを含む中央・南アジア(64年)が追って、人口を減少させる。

 地域差は、出生率の低下速度と移民の受け入れ状況によって生まれている。この先何が起きるのかについては、最近出版された河合雅司氏の著作(『世界100年カレンダー-少子高齢化する地球でこれからおきること-』朝日新聞出版)を読むことをお勧めする。

経済力や豊かさとオリンピックメダル数の関係

 日本は、東ヨーロッパ諸国と並んで、世界でも早くから始まった人口減少先進国である。西ヨーロッパ諸国がこれから後に続くとしても、出生率が一段と低く、移民受け入れに消極的な日本の人口減少はより深刻である。

 日本の国力が低下するのではないかという恐れが強い。人口が減っても、一人あたりの所得水準が高く、豊かになれば問題ないとは言えるかもしれない。しかし日本の一人あたりGDPはこの30年間、あまり上昇しておらず、欧米諸国や中国に比べて大幅に見劣りしている。人口と経済力の低下は国際的な政治力、軍事力、科学技術、文化、スポーツなどさまざまな面で日本の存在感を引き下げるおそれがある。

 コロナ禍によって1年遅れて開催された「東京2020オリンピック」には205国・地域と難民選手団1万1092人が参加し、33競技339種目で力を競った(IOCの発表)。そして優秀な成績を挙げた選手に対して、金メダル332個、銀メダル335個、銅メダル396個、合計1063のメダルが授与された(NHK発表)。

 メダルを授与されたのは90の国・地域を代表する選手である。メダルを獲得した国を比較してみると、バックに経済力と人口規模の大きさがあることがわかる。


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