「正恒集団」の代表は、反論する。
「カンボジアは独立国であり、第三国は基地を持てない」
しかし、カンボジアと中国は5年前から「共同軍事訓練」をしているのも事実なのである。
債務が台湾関係に影響も?
カメラは、マレー半島に飛ぶ。ここでは、パナマ運河をしのぐ130㌔メートルの新運河を建設する計画が進んでいる。マレー半島を貫いて、マラッカ海峡を経由しなくとも、インド洋に出ることが可能になる。政府との交渉や資金集めに奔走しているのは、中国政府と利害が一致している華僑である。
世界開発機構の上級研究員である、スコット・モリス氏によると、中国からの融資を受けている23カ国中、モンゴルなど8カ国が債務の支払いができない状況に追い込まれているという。モリス氏が問題視しているのは、こうした借款契約のひとつの条項である。「なんらかの違反があれば、一括返還しなければならない」という。モリス氏は次のように指摘する。
「プロジェクトと関係がなくとも、例えば、借り入れ国が台湾との関係を改善すれば、この条項が発動される可能性がある。政治的な内容が契約に盛り込まれているのである」と。
中国からの借り入れを支払えない状況にある、バルカン半島の先端に位置する、モンテネグロ。人口60万人の国が、日本円で1000億円相当を借り入れた。アバゾビッチ副首相は、次のように語る。
「中国からの借款は、前政権が決めたことです。いったい、どうしてこのような借り入れを決めたのか。金額は、我が国の国内総生産(GDP)の3割にも相当します。日本が、GDPの3割を外国から借りるでしょうか?」
借り入れたカネによって、2年前に高速道路が完成する予定だった。難工事などが重なって、いまだに開通していない。しかし、借款の返済は7月から始まっている。
「バナナ界のファーウェイ」習近平思想学ぶ
舞台は、カンボジアに戻る。中国の「食糧基地」化を狙って、進出した中国企業は、バナナの栽培農場300㌶を経営している。この土地も「99年間」の借地である。生産量は、年間2万㌧。3年後には、栽培面積を2倍に、カンボジア人の雇用も1000人増やす予定だという。
この企業の幹部で、カンボジア人労働者の教育・訓練を担当している人物は毎日、中国政府が配信している「習近平」思想をスマートフォンで学んでいる。
従業員に対して「我々は、バナナ業界のファーウェイになろう」と、檄を飛ばす。
取材班に対して、次のように語る。
「従業員の思想教育には、共産主義の教育が役立つ」
カメラは、この企業が建設した従業員宿舎に向かう。簡素な宿舎のなかに暮らす従業員の声を拾いながら。
「一番欲しいのは、トイレです」「もっと便利にして欲しい」
従業員の要望に対して、会社側の対応は遅れているという。
2013年、中国の習近平国家主席が突如打ち出した「一帯一路」構想。中国政府だけでなく、西側諸国までもがその言葉に“幻惑”された。それから7年。中国や沿線国は何を残し、何を得て、何を失ったのか。現地の専門家たちから見た「真実」。それを踏まえた日本の「針路」とは。
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