さらに、20日にはプーチン大統領が、シリアは変化を必要としており、自分はシリアの大統領を保護しないと発言した。プーチン氏は同時に、アサド外しはシリアをさらなる暴力の渦に追いやることになると欧米諸国に対する警告も忘れなかったものの、ロシアがシリアから距離を置き始めたことは明らかとなった。
12月28日には、ロシアのラブロフ外相が、シリア国民連合の指導部とすでに接触していることを発表したり、ボグダノフ外務次官も反対派に招待状を送ったことが公になったりと、ロシアがこれまで密接な関係を維持してきたアサド政権に見切りをつけつつあり、「アサド後」の準備を始めた証左が出始めた。
鍵握るロシアと和平会談
ロシアは少なくとも2012年末の段階では、シリア問題の平和的解決の路線を維持している。その象徴的な出来事が、年末に行われたロシアの首都モスクワでのシリア問題を巡る和平会談である。そしてやはりここでも、ロシアがシリアに対する政策を見直しつつあることがわかる。
まず、ロシアのラブロフ外相は27日に、モスクワを訪問したシリアのミファイサル・アル=ミクダード副外務大臣と会談を行い、武力による解決を諦め、退陣も視野に入れた現実的な対応を要請した。ロシアはアサド氏がかなり劣勢であることを理解しており、自分達のそのような思いをアサド政権側にも伝えたといえる。
実際、ロシアはアサド政権と心中するつもりはなく、そろそろ限界が近づきつつあるという認識を持ち始めていると、国連なども理解しているようだ。そして、そのような国連サイドの理解が後述のブラヒミ国連・アラブ連盟合同特別代表がロシアへのアプローチを活発化させる背景にあると言ってよい。
ブラヒミ氏はモスクワを訪問し、12月29日にはロシアのラブロフ外相と会談を行った。これに先立ち、ブラヒミ氏は5日間シリアのダマスカスに滞在して、アサド大統領らと会談し、内戦終結のための平和的改革を求めていたが、その成果を踏まえつつのモスクワ訪問であった。これらはブラヒミ氏の調停外交の一環であるが、ロシアはシリア問題で鍵を握る重要なアクターであり、ロシアとの共闘は不可欠だとするという氏の考えによって行われた。ブラヒミ氏が描いているシナリオは、アサド大統領退陣を念頭に置いたシリア各派による移行政府の樹立である。