2024年4月26日(金)

解体 ロシア外交

2013年1月11日

シリアがアフガニスタンの轍を踏まないように

 このように、シリアの内戦は、冷戦期のような米ロ間の代理戦争の様相も深まる中で泥沼化している。米国はロシアの通常兵器をシリアに全て出し尽くさせ、米ロ関係の基盤を有利にしたいと考えているという説さえある中、米ロ間の政治対立は厳しくなる一方だ。

 他方、ロシアは政権サイドに武器供与をしつつも、政治的解決を終始一貫して主張するという矛盾した姿勢を貫いている。米国などが主張してきたシリアへの介入を回避し、仮に、政治的解決を目指すとしても、その際には、ロシアと欧米諸国の対シリア政策にはまだ「アサド退陣」を前提とするか否かで隔たりがあることが最大の障害となっている。

 シリアを巡る状況は矛盾と関係国の利害対立、意見対立に満ちており、解決は極めて困難に見える。

 しかし、前述のように、ロシアがアサド政権に見切りをつけはじめたのもまた事実であろう。ロシアとしては、ロシアが働きかける形で、シリアの政権と反対派が交渉を通じて政治的解決を進め、親ロ政権が生まれるのが大国としてのメンツを保つ上でもベストだ。だが、アサド派劣勢の状況に鑑み、もはや反対派の勝利でも、最後に親ロ政権が樹立されれば御の字という姿勢に転換しつつある。つまり、トップが誰でも、シリアに親ロ政権が存在し続け、シリアをロシアの中東の拠点として維持できれば、どうでも良いと考えているようにも見える。

 シリア紛争の背後には、シリアを食い物にする大国間の国際政治がある。シリア国民の利益より、大国がそれぞれ自国の利益を追求することに最大のプライオリティをおいた形での和平プロセスにはシリア国民も同調できないだろう。現在のシリアのイメージはどうしても、冷戦末期のアフガニスタンと被ってしまう。今でも続くアフガニスタンに混乱を見るにつけ、シリア情勢には本当に深い懸念を抱いている。シリアがアフガニスタンの轍を踏まないことこそが世界の平和になり、ひいては大国にとっても利益になることを大国はそろそろ気づくべきだ。そして、より現実的かつ効果的な政策が構築されるべきだろう。

[特集] 知られざるロシアの実像

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