そのため、有機農業関係者と遺伝子組換え関係者は常に対立してきました。カリフォルニア州は、アメリカの中でももっとも有機農業が盛んな州であり、これまでも郡や地区単位で、遺伝子組換え作物の商業栽培禁止を求める市民運動が起こされてきた経緯があります。
カリフォルニア州はさまざまな環境運動、市民運動が盛んで、ハリウッドなども抱えてとかく目立つ州。市民団体の中には、カリフォルニア州で運動を仕掛け映画人を巻き込んでPRに努め、全米への波及効果を狙うところもあります。遺伝子組換えの表示制度は、他州の中にも検討中のところがあり、カリフォルニア州の州民選挙でもし制度が成立すれば、影響は小さくありません。
州民投票の結果は……
http://votersedge.org/california/ballot-measures/2012/november/prop-37/funding
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こうしたことから、この州民投票は全米の注目を集めることに。「表示イエス」運動は有機食品の生産や販売関係者が後押しし、「表示ノー」は遺伝子組換え開発メーカーや大手食品メーカーなどが中心となり主張を展開しました。それぞれ、920万ドルと4600万ドルの資金を投入してPRし、全米のマスメディアがたびたび報道しました。表示制度が義務化されると、消費者の金銭的な負担が増えるという研究結果も、コンサルタント企業から公表されました。また、学術誌「Science」を発行している学術団体The American Association for the Advancement of Science(AAAS)は、10月に反対意見を表明しています。
さて、州民投票の結果は?
ロサンゼルス・タイムズはじめ主要各紙が、こぞって反対への投票を勧める社説を掲げたこともあってか、「表示ノー」が僅差で勝利をおさめました。
日本人にとっての注目ポイントは、一見「知る権利」論争に見えて、内実は自らの利害を冷徹に計算し尽くした壮絶な攻防戦がカリフォルニア州で繰り広げられた、という事実でしょう。他州でも、遺伝子組換えの表示制度や栽培禁止を模索する運動が出てきています。前述の宗谷さんは、日本の食品製造や価格に影響を与える可能性を指摘しています。
日本でも、組換え反対派(そこには、多くの有機農業者が含まれます)が表示制度の変更を求めており、一部の評論家などはカリフォルニア州の州民投票の結果が出る前は、「アメリカでもうすぐ、すばらしい表示制度ができる。それに引き換え日本は…」などと発言していました。そうした際には必ず、消費者の「知る権利」が引き合いに出されました。