2024年12月3日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年1月28日

 ロシアによるウクライナへの武力威嚇、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大の阻止などの安全保障取り決め提案は、北欧の安全保障の均衡に大きな影響をもたらしている。

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 フィンランドでは、マリン首相が12月31日に、ニーニスト大統領が1月1日に、それぞれ、フィンランドにはNATO加盟の選択肢がある旨、明言した。スウェーデンでは、中道左派の社民党政権がNATO加盟に懐疑的な態度を取り続けているが、右派の野党はNATO加盟に積極的である。

 9月の議会選挙において、中道右派はこの問題を争点にしようとする可能性が高いと見られている。なお、スウェーデンは、社民党が与党であった過去7年間においても、同党のNATO加盟についての懐疑論にかかわらず、NATOと米国にかなり近づき、共同演習もしてきた。

 米ソ冷戦時代を通じて、北欧には、NATO加盟国であるノルウェー、中立のスウェーデン、ソ連に近い国であるフィンランドが存在するという、「北欧バランス」といわれた安全保障体制というべきものが形成されてきた。

 ソ連の崩壊などにより、ソ連とフィンランドの関係は、ソ連が圧倒的に優位な影響力を持つ、いわゆる「フィンランド化」はなくなったが、安全保障体制としては、「北欧バランス」は保たれてきた。しかしプーチンの下、ロシアがゴルバチョフ、エリツィン時代の考え方からソ連時代に発想の面で先祖返りする中、北欧諸国では安全保障を北欧バランスの形で保てるのかの議論が起こってきた。


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