2022年10月5日(水)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年2月7日

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松永和紀 (まつなが・わき)

科学ジャーナリスト

1963年生まれ。89年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち、フリーの科学ジャーナリストに。主な著書は『踊る「食の安全」 農薬から見える日本の食卓』(家の光協会)、『食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない』(日本評論社)、『効かない健康食品 危ない天然・自然』(光文社新書)など。『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』(同)で科学ジャーナリスト賞受賞。2021年7月より内閣府食品安全委員会委員(非常勤、リスクコミュニケーション担当)。(記事の内容は、所属する組織の見解を示すものではなく、ジャーナリスト個人としての意見に基づきます)

「Wedge」2022年2月号に掲載され、好評を博した特集「〚人類×テックの未来〛テクノロジーの新潮流 変革のチャンスをつかめ」記事の内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(Wedge Online Premium)にてご購入ください。
 
REGIONAL FISH INSTITUTE, LTD.

 「ゲノム編集食品」の市販が2021年、始まった。機能性成分の「GABA(ギャバ)」を高蓄積させたトマトと、可食部増量マダイ、高成長トラフグの3品目。中でも注目は、大学発のベンチャー、リージョナルフィッシュ(京都市)が手がけるマダイとトラフグだ。ゲノム編集植物の商用化は米国でも例があるが、魚類、すなわちゲノム編集動物の販売は世界初。しかも、植物は健康によい成分をアピールする消費者志向型の食品であるのに対し、ゲノム編集魚類は、少ない飼料で速く高品質のたんぱく質を得るのが大きな狙いとなっており、世界的な食料増産への貢献が期待される。ゲノム編集と日本が得意とする養殖技術がミックスされて、新しい価値を創造しようとしている。

 リージョナルフィッシュは、京都大学と近畿大学の共同研究の成果を社会実装するベンチャーとして19年、スタートした。可食部増量マダイは、筋肉細胞の増加や成長を止める役割を果たすミオスタチンという物質を作る遺伝子が機能しないようにゲノム編集し、筋肉が増えやすくなっている。マダイの可食部が平均して1.2倍増え、飼料利用効率が14%向上した。高成長トラフグは、ゲノム編集技術によりレプチン受容体遺伝子の機能を失わせたものだ。成長速度が平均して1.9倍、飼料利用効率が42%改善した。

 これらのゲノム編集は、ゲノムの狙った位置を切り、あとは自然に任せていくつかの塩基が失われ遺伝子の機能が変化しており、遺伝子を外から入れる「遺伝子組換え」とは異なる。ゲノムが切れていくつかの塩基が欠失する現象は、自然やこれまでの品種改良(育種)でも普通に起きていること。そのため国は、これらのゲノム編集魚類の安全性は従来の食品と同等と判断し、届出を認めた。

 飼育は陸上の水槽で行う。生きた魚や卵が海に流れ出すことなどがないように何重もの防御策を講じているため、自然の生態系への影響もない。

 同社の梅川忠典社長によれば、育種においてゲノム編集技術を用いる最大の利点は、その速さにある。魚類では30年かかった育種が、ゲノム編集技術を用いれば……

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Wedge 2022年2月号より
テクノロジーの新潮流 変革のチャンスをつかめ
テクノロジーの新潮流 変革のチャンスをつかめ

メタバース、自律型ロボット─。世界では次々と新しいテクノロジーが誕生している。日本でも既存技術を有効活用し、GAFAなどに対抗すべく、世界で主導権を握ろうとする動きもある。意外に思えるかもしれないが、かつて日本で隆盛したSF小説や漫画にヒントが隠れていたりもする。テクノロジーの新潮流が見えてきた中で、人類はこの変革のチャンスをどのように生かしていくべきか考える。

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