議会議長選任で見えた根深い腐敗体質
問題は、就任式直前に起きた国民議会議長の選任を巡る、与党議員の造反である。大統領選挙では、カストロのリブレ党と救世主党が連合し、カストロが候補者となる代わりに議会議長は救世主党から選出するとの約束があった。ホンジュラスは定数126の一院制で、カストロのリブレ党は50議席、連合を組んだ救世主党は10議席を獲得したが、議会議長選挙の段階でリブレ党から、造反者が出て、議長選出手続きが混乱した。造反に怒ったリブレ党支持者が議会に押しかけたため、造反議員を含む反対派は、議会外で投票を行い、他方、カストロ支持派は、議場で議長候補を選出し、2人の議長が選ばれた。
造反の理由は、10人程度の少数会派から議長を取ることに納得できないとのことのようであるが、造反議員の背後には腐敗した旧政権与党がいて、反汚職、反麻薬のカストロの選挙公約の実現を阻むために工作が行われたとの見方もある。問題解決は、最高裁判所に委ねられるようであるが、判事の多くは前政権が任命しており、カストロには不利は裁定が行われる可能性が高い。
同国の国内ポリティクスは推し量り難いが、いずれにせよ、国会議員を含めて根深い腐敗体質があるようで、議会での多数を失えばカストロの国内改革も前途多難が予想される。なお、麻薬密売の共犯が疑われるエルナンデス前大統領は、中米議会(中米統合機関の立法府)議員に就任し不逮捕特権を獲得した。
カストロ大統領は、腐敗防止に国連の関与を求める方針のようであるが、国内で足を引っ張られる事の無いよう、慎重な取り組みが求められる。バイデン政権にとっても地域の拠点国としたいホンジュラスの安定が損なわれれば、直ちに移民急増につながってしまうが、他方、内政干渉もできないので、忍耐強い対応が必要になりそうである。