右派左派ともに政権担当能力を欠く
イタリア国内でどう受け止められているのか明確なことは分からないが、大統領選挙のプロセスを通じて、イタリアの政党には重大な欠陥があり、政治の責任感を欠いていることが露呈したという指摘がある。右であれ左であれ、連立を組んで政権を担当する能力を欠いている。
右派政党「同盟」のサルヴィーニは上院議長のエリザベッタ・カセラッティ(右派「フォルツァ・イタリア」所属)を大統領候補に担いだが、右の諸政党の中にすら彼女を忌避する向きが多く、382票を得ただけで惨敗した。従って、政党あるいは政治家が政治の主導権を握る態勢にない。イタリアの民主主義はリーダーシップと安定性を今後ますます選挙によらないテクノクラートに頼ることになるかも知れない。
それは正常な姿とは言い難いが、今回、イタリアの政治家は最後の段階に至って妥当で必要な判断を下したとは言えるであろう。ドラギの後がどうなるのかの見通しもないが、この局面では、ドラギが首相として続投することが最善の選択である。少なくとも、2023年前半に予定される次の議会選挙までは彼が続投するであろう。ただ、マッタレッラが2期目7年を全うするとは考えにくく、ドラギがいずれその後を襲う可能性は残されている。