「対米懐疑論」は政界でも噴出している。議会第3党、台湾民衆党の蔡壁・立法委員(議員)は25日、フェイスブックで、「世界の警察」の出方に注目が集まる中、バイデン大統領がロシア軍の侵攻当日、ツイッターに「全世界の祈りが、ウクライナとともにある」などと投稿したことを「お笑い草」と指摘。米国は大衆迎合の「ワイドショー政治」に陥っていると嘆いた。
台北市の柯文哲市長も25日、「他人が助けに来てくれるという幻想を、持ち続けてはいけない。国際政治というものは、最後は自身を頼りにするしかない」などと述べた。
一方、蔡英文政権は、「対米懐疑論」が広がる背景には、米台離反を狙う中国が、人の心を操る「認知戦」を発動したためとみて、警戒を強めている。
中国による〝動画工作〟
ロシア軍の侵攻翌日の25日、現地の中国大使館は、チャーター機による在留中国人の緊急退避計画を発表、「台胞証」(台湾居民来往大陸通行証)を持つ台湾人も救出の対象と宣言した。まもなく「台湾ボーイ」を名乗るインフルエンサーが、感極まった面持ちで祖国に感謝する動画をSNSに投稿、「母なる祖国への永遠の愛を」と訴えた。
台湾メディアの鏡週刊によると、「台湾ボーイ」はウクライナにいる訳でなく、広東省の東莞市在住。父親は台湾人だが、本人は中国国務院台湾事務弁公室が育成したインフルエンサーで、今回の投稿は、中国が事前に計画していた「認知戦」の一環とみられる。
台湾政府で中国本土を所管する「大陸委員会」の邱太三主任委員は25日、投稿を「誰も相手にしない。台湾人の反感を増すだけ」と一蹴したが、「中国の認知戦に対し注意を続けたい」と述べ警戒感を示した。
邱主任委員は、「今日のウクライナ」の比喩も疑問視。地政学的に重要な位置を占め、世界的な半導体産業を持ち、米国と「台湾関係法」で結ばれた台湾とウクライナは、状況が異なると指摘。台湾政府が、ウクライナ問題への対処の中で、中国の「認知戦」対策を中心政策の一つとして取り組む方針を明らかにした。