世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年3月30日

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 ロシアのウクライナ侵攻によって欧州連合(EU)はそのエネルギー政策を大きく転換することになった。3月8日、欧州委員会は2030年以前にロシアの化石燃料(ガス、石油、石炭)に対する依存を解消する計画の大枠を公表した。

 特にガスについては、その気になれば(具体的根拠は示されていないが)ロシア以外のガスの液化天然ガス(LNG)およびパイプラインによる輸入拡大、再生可能エネルギーの利用促進などによって、今年中にロシア産ガスへの需要を3分の2程度減らせるとしている。

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 これを受けて、3月10~11日のEU首脳会議のベルサイユ宣言には「ロシアのガス、石油、石炭の輸入に対する依存をなるべく早期にフェーズアウトすることに同意した」と書かれている。詳細は今後5月末までに欧州委員会が用意する提案を基に検討が進むようであるが、ロシア依存解消には加盟国の大胆かつ迅速な行動が必要であり――50年のネット排出ゼロに向けて緑のイニシアティブの進展とガス供給源の多様化が前提のようである――欧州委員会が想定するように進むと考えることは早計であろう。

 ここでの議論は対ロシア制裁としての禁輸ではないが(EUはエネルギー分野の制裁に踏み込むことを避けており、ガスの輸入を続けている)、ロシア依存解消のためには米国(LNGの最大の輸出国)など関係諸国の協調を得ることも欠かせないであろう。

 このようなEUのエネルギー政策と、固有の政策を掲げる東欧諸国とのエネルギー政策との衝突は避けられないように思われる。3月14日付けワシントンポスト紙掲載の論説‘The E.U. might want to cut off Russian energy, but fuel-dependent Poland, Hungary and others have other plans’は、「欧州のエネルギー・セクターの来るべき変容はハンガリーにとって甚大な問題である。その他の中東欧諸国も同様にEUが提案する戦略に懐疑的である。緑の革命の加速を通じてロシアのガスを排除するとの提案がEUの団結を強化することはない。それはEUの鎧に重大な亀裂を生むことになる」と指摘する。

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