2024年4月25日(木)

この熱き人々

2013年3月14日

 「40年を振り返ったのは、この先もこの道を歩み続けるために書いたんです。回想録と思われるのはイヤですね」

 きっぱりした口調で語る原の目に、40年たった今の日本のファッションはどう映っているのだろうか。

 「真似るのではなく自分の組み合わせを自由に考えよう、リラックスして自分に合わせて着崩すことを心がけようと提案してきたけど、気がついたらすごい勢いで崩れていて、今では少し戻したいと思っています。キチンとした文字を書けて初めて美しい崩し文字が書けるわけで、お手本がなく見本も崩れてしまったものしか見ていないと、どうなっちゃうのか心配です。常に新しいものに飛びついて、毎日とっかえひっかえしながら着捨てていくのって異常だなって思う。着るというのは表現だから、自分が一番好きなもの、自分に一番似合うものを見つける。見つけたらそこにこだわる。流行を超えて、自分に合ったものを見極める。そのお手伝いをしていこうと思っています」

 大事にしていたコレクションの資料やスクラップ、貴重な雑誌類などを寄贈し、すっきりとした部屋で、原は穏やかにそう語る。その目の先には、向かうべき自らの道がしっかりと見据えられているように感じられた。

(写真:佐藤拓央、撮影協力:F.O.B COOP広尾本店

原由美子(はら ゆみこ)
1945年生まれ、神奈川県出身。大学卒業後、女性誌「アンアン」創刊準備室に参加、71年からスタイリストの活動を始める。「クロワッサン」「婦人公論」ほか多くの雑誌や広告媒体などでスタイリスト、ファッションディレクターとして活躍、73年からはパリコレクションの取材を始め、ファッションコラムの執筆などを通し海外モードの紹介にも尽力した。

◆「ひととき」2013年3月号より

 

 

 

 
 

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