バイデンの頭をよぎる中間選挙への影響
「第二次制裁」の最大の問題は、もし実際に米政府が中国政府機関、大企業などに対する制裁に踏み切った場合の世界経済全体への影響だ。
特に、これまでエネルギー面での対露依存を強めてきた欧州諸国としては、今後ロシアからの石油、天然ガス輸入について一段と削減を余儀なくされ、その結果、世界市場における石油高騰に拍車をかけることになりかねない。
車が日常生活の一部と化した米国においても、すでに昨年比20%前後も値上がりしたガソリン価格のみにとどまらず、諸物価にも波及して市民生活を圧迫し始めている。11月に中間選挙を控え、支持率低迷にあえぐバイデン政権としても、国内経済へのこれ以上の悪影響は何としても回避しなければならない苦しい事情にある。
去る3月31日、バイデン大統領が過去最大規模となる石油備蓄の放出を発表したのは、まさに〝窮余の一策〟であり、ロシアのウクライナ侵略で高騰した原油価格抑制が狙いだった。発表によると、来月5月から今後6カ月にわたり1日あたり平均100万バレル、計1億8000万バレルの放出という大胆なものになるという。
このうち注目されるのが「6カ月」という期間だ。中間選挙を視野に入れたものであることは明らかであり、11月投票日ぎりぎりの段階まで、石油備蓄の放出を続け、その間にガソリン価格を安定させ、政権支持率上昇につなげたいとの読みがある。
米政府は、並行して、世界各国に対しても、協調を呼びかけてきた。この結果、主要石油消費国で構成する国際エネルギー機関(IEA)も今月1日、オンライン形式の緊急閣僚会議を開き、加盟各国が今後、計6000万バレルの石油備蓄について協調放出することを決めた。
解決見えない原油不足で二次制裁の必要性高める
ただ、肝心の産油国からなる石油輸出国機構(OPEC)プラスは前日の31日、ウクライナ危機に関連し米欧諸国が求めていた原油追加増産について「見送り」を決めたばかりだ。このため、米国およびIEA加盟諸国による備蓄放出はあくまで一時的措置であり、ウクライナ戦争がさらに長期化あるいは激化していった場合、世界市場における原油供給不足の抜本的解決策にはならないとの悲観論も出ている。
その一方で、米政府内そして米議会ではいぜんとして、「第二次制裁」発動こそが、ウクライナ戦争の早期停戦への〝触媒〟になるとの見方も少なくなく、バイデン大統領としても苦しい選択を迫られていることは間違いない。