欧州を中心に日本への批判が上がった理由は何かを想像すると、欧州諸国が歳出を切りつめて財政再建に躍起になっている中で、日本が積極的な財政支出を通じて景気浮揚をはかろうとする姿に違和感が強いからではないか。一方で、金融緩和によって自身も経済回復を図っている米国などからは理解を受けていることを考えると、各国の経済政策のスタンスの違いが日本を見る目にも投影されているといえる。
アベノミクス 日本国内の評価
翻って足元の日本の報道はどうかと考えると、日本国内でもアベノミクスに対する見方は基本的に評価する方向だが、やはり新聞を中心に論調には温度差がある。
例えば産経新聞。産経は全体的に「親安倍」のスタンスであるが、2月26日には、世論調査で約70%にまで達した高支持率の背景解説にあたって「支持率を押し上げている最大の要素は、なんと言っても経済だ。首相が打ち出した経済政策アベノミクス効果で、民主党政権時に低迷していた株価が一気に上昇。日本経済を悩ませ続けてきた円高も是正されたのだから、評価されるのは当然だ」と持ち上げた。
一方朝日新聞は日銀総裁の人事にからみ、3月3日、黒田東彦・アジア開発銀行総裁が就任することを前提に、「着地策なき大技の無謀さ」と題した編集委員論文で、「景気が回復し、金利上昇局面と考えて市場が反転したとき、はたして金融政策の制御がきくのか」と指摘。アベノミクスの手法にひそむ危険性を警告した。
アベノミクスに懸念を示す論調の背景には「これまでうまくゆきすぎているが、本当にこのまま順調に進むのか」という漠然とした不安感がある。筆者が問われれば、まだアベノミクスを評価するには時期尚早であり、期待と懸念のどちらが大きいかはまだわからない、というのが本音だ。
とはいえ、今の日本にデフレ脱却が必要なのは間違いない。バブルの崩壊時期も含めれば20年にわたって閉塞感が漂う日本経済はそろそろ局面転換を図るべき時ではある。
日本が今後、いわれのない批判を受けないためには、軌道に乗ってきた経済の回復基調を持続させるとともに、国際的に合意した政府債務の削減についても実行する姿勢を見せることが必要だ。日本が借金にこれ以上頼れないことは明らかであり、国債市場の変調や金利の高騰などを未然に防ぐためにも財政健全化が大切なのは言うまでもない。安倍首相は財政再建を常に念頭に置きつつアベノミクスを推進してデフレ脱却を果たすことが求められている。
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