2022年6月30日(木)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2022年4月23日

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片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社社員

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会) 『日本の漁業が崩壊する本当の理由』『魚はどこに消えた?』(ともにウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著、『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

違法・無報告・無規制(IUU)漁業の魚は輸入品ばかりではない

 「違法な水産物はどこから来るのでしょうか?」と問われれば、多くの人は海外からの輸入品とまず考えるかも知れません。しかしながら、上記の大間のクロマグロのケースも、まさに無報告の違法・無報告・無規制(IUU)漁業の1つなのです。IUUは持続可能な開発目標(SDGs)14(海の豊かさを守ろう)で、なくすことが下記通り明記されています。

 『水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させるため、2020年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する』

 期限は20年でしたが……。実現していないどころか、魚の資源は減少。違反が次々出てくる始末です。

なぜこのような闇の流通が可能だったのだろうか?

 日本で闇流通がまかり通っているのは、それを排除する仕組みがしっかりしていないからです。その仕組みがトレーサビリティです。例えば、日本が輸入しているノルウェーサバノルウェーサーモンのケースを見てみましょう。

バーコードで管理されるノルウェー産サバ(左)とアトランティックサーモン(筆者撮影)

 上の写真のようにバーコードで1ケースずつ管理されています。また生産日を始め、必要なデータも表記されていることが分かります。

 一方で、日本の水産物の多くは、写真のように生産日はおろか、ほとんど何も書かれていないものが多く見られます。万一放射性物質や汚染の問題が起きても、魚の名前が書いてある程度ではトレースができません。「大丈夫」と言われても……。どうやって証明するのでしょうか? 客観性がないために、風評被害の拡大は避けられないかも知れません。

日本の水産物は、水揚げから消費者までの一貫したトレーサビリティができてないものが大半(筆者撮影)

「漁獲証明」不正が起きにくいEUの流通 

 欧州連合(EU)では10年から水産物の輸入に「漁獲証明」を求めています。漁獲証明により、どこで誰がいつ漁獲したのか証明されます。このためIUU漁業による水産物はEUに輸出できません。EU向けが多いノルウェーは、迅速に電子証明を発行できるようにしました。

 EU向けにならない違法な水産物であったとしても、日本ではメロ、ミナミマグロなどの例外を除き「漁獲証明」要求していません。このためIUU漁業による水産物がすり抜けて入って来ている可能性が否定できないのです。

 わが国では、国産・輸入品に限らずIUU漁業のものかどうか分からない水産物が流通してしまいます。漁業法の改正で罰則が強化されたとはいえ、残念ながらこれが日本の現実なのです。

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