2024年11月23日(土)

世界の記述

2022年4月22日

 マクロン大統領は、国内外で一定の支持を維持しつつも、振り返れば多くの課題をクリアできぬまま、決選投票の舞台に戻ってきた。

 パリのソルボンヌ大学では、4月14日、数十人の学生が「マクロン、ルペン、彼らの世界に反対する」と書いた垂れ幕を大学の校舎に吊るし、大学封鎖を行った。参加者は、共同声明で、〈マクロンとルペンは、社会、環境、フェミニズム、反差別に対する不安に耳を傾けていない。われわれは、リベラリズムと国家主義の5年を耐えることはできない〉と発表している。

「#マクロン以外ならすべて」の票はどこに

 02年以降、極右は2回の決選投票を経験している。毎回、勝敗の予測は、あまり困難でなかった。しかし、今回の行方については、最後まで分からないというのが大方の見方だ。

 第1回投票で、得票率22%だった左派「不服従のフランス」のメランション氏は、「(私の票が)一票たりともルペンに渡ってはならない」と警告してきた。だが、彼を支持した有権者の選択次第では、ルペン候補が初代女性大統領の座に就く可能性もあるという。 

 米国ジャーマン・マーシャル財団によると、メランション氏に投票した50%が、「不服従のフランス」の純粋な支持者である一方、残りの50%は、同氏に必ずしも賛同している有権者ではないという。

 複数の専門家は、左派の3分の1の票は反体制派で、現在、SNSに出回っている「#マクロン以外ならすべて」を支持する集団だと分析する。彼らの票が、決選投票で番狂わせを起こす可能性もあると見ている。

 マリーヌ・ルペン候補を支持する、特に若い世代は、従来の支持者層と比べ、極右に対する印象が異なっている。彼らは、極右的思想からルペン候補に票を投じるというよりも、混乱した社会からの脱却や、世の中の変化を求めている。

 その変化とは、治安維持、定職、定住が確保された社会であると、筆者は過去の取材を通して知った。18〜24歳までの有権者に限れば、第1回投票では、ルペン候補がマクロン大統領を約5%上回っている。しかし、ルペン候補は、投票者の多くを占める70歳以上からの人気がすこぶる悪い。

 このような観測から、ルペン候補の当選は難しいと判断せざるを得なくなる。父親が築き上げたFNの過激なイメージが、現在でも多くの年配有権者の潜在意識に潜んでいることも影響しているが、何よりもフランスの左派と極右の相性は合致しない。左派票がルペン候補に流れる数は、ごくわずかに過ぎないだろう。番狂わせは、簡単に起きそうもない。

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