明暗を分ける6月の総選挙
ルペン氏の極右が、ここまで得票率を獲得し、2大政党のひとつとして争えるようになったのは、国民が「国民連合」(前身は「国民戦線」)をもはや極右と見なしてない証拠だ。
決選投票前の5月21〜24日に行われた世論調査によると、月給1250ユーロ(約17万円)以下の国民は、ルペン氏に投票するとの考えを示し、月給3000ユーロ(約41万円)以上の国民は、マクロン大統領に一票を投じる意向を示していた。
財政改革、増税、定年引き上げなど、中間層は、マクロン大統領の政策に反対してきた。極右が40%を超える支持を得たということは、今後、フランス社会の分断がますます進む可能性を意味している。
左派陣営は、決選投票の結果をどう見ているのか。開票後、左派「不服従のフランス」のジャン=リュック・メランション氏(70歳)は、「第5共和制で最悪の大統領」と酷評。そして、ルペン氏の敗北については、「国民にとって、非常によいニュースだ」と喜んだ。
第1回投票で3位につけたメランション氏は、決選投票後の演説で、6月に予定されている国民議会(下院)選挙を「第3回投票」と呼び、気持ちを切り換えた。同氏が目指すところは、同選挙で左派が過半数を獲得し、野党主導内閣の「コアビタシオン」で自らが首相になることだろう。
ロイター通信は25日、「マクロン氏の政党が敗北すれば、同氏が掲げる定年退職年齢引き上げを含む企業寄りの政策目標は、実現が困難になるとみられる」と分析した。
進むエリート対大衆の構図
マクロン大統領が勝利宣言を行っている最中、パリ市内や西部レンヌの町中では、抗議活動が行われていた。AFP通信によると、レンヌには反資本主義を訴える若者数百人が集まり、「マクロンも警察も、われわれに宣戦布告している」などと叫びながら抗議していたという。
パリ市内の共和国広場でも、「マリーヌ・ルペン、むかつく。マクロン、むかつく。マクロン、出ていけ!」の声が響きわたっていた。両候補者に賛同できない約300人の反結束主義者らが集まり、早々にマクロン大統領の撤退を訴えていた。
この数年で浮き彫りになったのが、低所得者層と若年層がルペン氏に投票せず、棄権していることだ。特徴的なことは、小都市と大都市での投票率が高く、中堅都市で棄権が増加したことだった。特に、25〜34歳と労働階級者の棄権率が高く、退職者のそれが極めて高かったことが、調査会社イプソスの調査で判明している。
また、仏週刊誌レクスプレスによると、幹部職の71%はマクロン大統領に投票し、労働者の68%はルペン氏に投票しているようだ。ここから明らかなのは、フランスが「エリート対大衆」の二項対立になっていることだ。