マクロン大統領が演説する会場周辺は、異様な空気に包まれたという報道もある。フランスと欧州連合(EU)の旗を振る若いマクロン支持者を勝利宣言の舞台に近寄らせ、カメラに歓喜の様子を伝えるセッティングがなされたというのだ。
スペイン紙エルパイスの記者は、周辺が混み合っておらず、すぐ傍で犬の散歩をしている住民さえいたことから、通常の勝利宣言の光景とは大きく異なったと書いている。
左派系の仏日刊紙リベラシオンは、25日付朝刊の一面に大きな文字で「誰にメルシー(ありがとう)?」と打った。マクロン大統領が勝利宣言で真っ先に口にした感謝の言葉に対し、同紙は疑問を投げかけたのだ。
求められる1期目以上の勇気と覚悟
マクロン大統領続投は、「更なる分断を生む」との見立てが強い。どのメディアを見ても、過去最高の得票率を得たルペン氏の落選を安堵する風潮が常態化している。その背景には、「ルペン」という言葉が、長らく「極右」の代名詞になってきたことによる。
だが、現在の「国民連合」は、父親のジャン=マリー・ルペン氏が築き上げた極右政党「国民戦線」(FN)とはかけ離れたイメージを、国民は持っている。ルペン氏に一票を投じた国民の多くは、元々、左派系の労働階級者であったり、低所得者層であったりもする。彼らは、国家主義や移民排斥などの信条とは別の思いで、ルペン氏に票を託している。
米大統領選挙でも顕著化したように、トランプ前大統領を支持した国内の約半数の有権者が国内外から糾弾されることは、本来あるべき姿ではない。ルペン氏の支持者をトランプ支持者のように扱う政治家やメディアも、フランスの分断を煽っている張本人であることを自覚しなければならない。
2期目を迎えるマクロン大統領は、フランスの経済政策、ロシア・ウクライナ問題、コロナ対策など、課題は山積みだ。燃料費の消費税増加で暴動が起きた市民運動「黄色いベスト」も未解決のままだ。
マクロン大統領は、さらに分断される社会の溝を、どのように埋めていくのか。1期目以上の勇気と覚悟が必要になりそうだ。