2024年4月24日(水)

プーチンのロシア

2022年5月2日

 欧州向けの天然ガスを中国やインドなどが代わって購入することも困難だ。ガス輸出にはパイプラインの敷設が必須だが、新規に建設するには何年もの時間がかかる。

 天然ガスを液化して液化天然ガス(LNG)として輸出するにも、ロシアの製造設備は限られている。プーチン大統領はまた、天然ガス以外でもルーブル払いを促進するよう指示を出しているが、結果的にはロシアが市場を失う動きを加速させかねない。

進み続けるロシア経済の長期低迷

 国際金融協会(IIF)は3月10日、2022年のロシア経済が15%のマイナス成長に落ち込むとの見通しを発表したが、これはソ連崩壊以後で最悪の水準だ。欧州復興開発銀行(EBRD)も3月31日、10%のマイナス成長を予想した。EBRDは、23年はゼロ成長を予想しており、ロシア経済の長期低迷は避けられない。

 ロシアの首都モスクワでは、外資系企業の撤退で20万人規模の失業者が出る可能性があることを市長自らが公言した。プーチン政権の圧制と経済的な先行きを絶望して、IT技術者や企業経営者などロシアの経済発展を担う数十万人の若者らがロシアを脱出したとの調査結果もある。

 ルーブル相場が表面的に回復しても、ロシアの実態経済の悪化は今後確実に表面化していく。実現の見通しが立たないウクライナ支配というプーチン政権の願望に引きずられるロシア国民は、その失政の尻拭いをさせられることになる。

 
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 ロシアのウクライナ侵攻は長期戦の様相を呈し始め、ロシア軍による市民の虐殺も明らかになった。日本を含めた世界はロシアとの対峙を覚悟し、経済制裁をいっそう強めつつある。もはや「戦前」には戻れない。安全保障、エネルギー、経済……不可逆の変化と向き合わねばならない。これ以上、戦火を広げないために、世界は、そして日本は何をすべきなのか。
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