2022年7月3日(日)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年5月9日

»著者プロフィール
閉じる

渡辺好明 (わたなべ・よしあき)

新潟食料農業大学学長

1945年生まれ。68年3月、東京教育大学文学部卒業し、同年4月に農林省入省。水産庁長官、農林水産事務次官、内閣総理大臣補佐官、東京穀物商品取引所理事長などを歴任。2018年4月に新設された新潟食料農業大学で学長に就任した。全国農地保有合理化協会会長も務める。

食品表示の法整備も、徹底は道半ば 

 15年にJAS法、食品衛生法、健康増進法の表示部分が統合されて「食品表示法」が整備され、それに先立つ「牛(牛肉)トレーサビリティ法」、「米(コメ)トレーサビリティ法」、「食糧法」、「農産物検査法」などによって、食品表示制度は統合、強化されつつある。これらに比べて水産物は、やや歩みが遅い気がする。海外の制度は、国際規格としてのコーデックス、EUや米国にもそれぞれ厳しい基準がある。

 1960年代のはるか昔のことになるが、米国食品医薬品局(USFDA)の担当者と話し合う機会があり、「スカート型のコカ・コーラのビンには表示のスペースがないが、どうやって消費者に情報提供しているのか」と聞いたところ、ビンの王冠を手にして、その王冠裏に細かい文字でingredient(原材料名)が書かれていることを示した。たとえ文字が小さくとも、「知りたいという意思を持った消費者が確認できなければならない」というのである。これが、すなわち知る権利、選ぶ権利なのである。

「法令順守」と訳されるコンプライアンス 

 収益を高めるため「法令規制」のギリギリがクリアされればよいとの考え方がなお横行している。本来は、近江商人のごとく、「お客よし、売り手よし、世間よし」で、「顧客の要望に応える、世間様の常識を守る、お天道様に顔向けできるように」であるが、しばらく忘れられていた。

 なお、水産物には、漁獲海域、水揚げ港が産地となる原産地表示の特異性がある。特に貝類については、「長いところルール」のルーズな運用と相まって、価値を高める蓄養ではないにもかかわらず、流通業界の誤認・悪用(わかっていても黙っている商習慣)、消費者への偽装表示がごく一般化している。

消費行動を促すためにも商品情報の開示が不可欠 

 モノが不足していた時代から今日へ、消費者の関心領域は、物量⇒価格(物価問題)⇒品質⇒安全・安心⇒健康・美容(アレルギー、グルテンフリー、機能性など)⇒持続可能な開発目標(SDGs)・フェアトレードへと変わってきている。

 これに応え、時代に適合した食品製造・販売と情報の提供が求められる。また、それを担保する流通のあり方、とくに法制、科学技術・機器の整備が必須な時代になった。最も大事なことは、コンプライアンスの「真の意味」を浸透させ理解させることである。

 国内外を問わず、コンプライアンスとマーケットインは一体のもので、一例として、EUへの水産物輸出を行っている北海道の漁業協同組合連合会「北海道ぎょれん」の活動を挙げたい。輸出先国EUの厳しい法制・基準を順守するのは当然のこと、この実効性確保のため、大連での中間加工も含めた全過程に管理責任を持つシステムを採用していると聞いた。これは、中国産毒入り餃子の教訓が生かされた消費者重視である。

関連記事

新着記事

»もっと見る