2022年7月1日(金)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年5月9日

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渡辺好明 (わたなべ・よしあき)

新潟食料農業大学学長

1945年生まれ。68年3月、東京教育大学文学部卒業し、同年4月に農林省入省。水産庁長官、農林水産事務次官、内閣総理大臣補佐官、東京穀物商品取引所理事長などを歴任。2018年4月に新設された新潟食料農業大学で学長に就任した。全国農地保有合理化協会会長も務める。

 商品選択の判断は消費者にゆだね、必要な情報は、全面的に開示・提供すべきであろう。米国のケネデイ大統領は、1962年に、消費者の4つの権利と称する「特別教書」を議会に送ったが、その精神は、いまでも燦然(さんぜん)と輝いている。

 4つの権利とは、①安全である、②知らされる、③選べる、④意見が反映される(to be heard)である。そして、消費者は、保護される存在から「消費者主権」、判断し行動する消費者へと変わるに違いない。

 情報開示には、「必ず記録」、そして、監視と違反一発即退場をルール化する、関係者には、こうした現実感の浸透が大事なのだ。

国産安全信仰から主体的に判断・行動する消費者へ 

 結びに、以下の点を重ねて強調しておきたい。それは、これだけ多くの食品が出回るようになった時代に、「国産なら必ず安全で安心」とはならないということだ。

 国産信仰が消費者の主体的判断を鈍らせているのかも知れない。先に紹介した『食品偽装』では、「性善説から性悪説へ」と表現する。これを防止するとすれば、最終消費者が生産、加工、流通、販売の全プロセスを「知ろうとすれば必ずわかる仕組」としなければならず、さらに信用がおけなければ、ローカルフードシステムや地域支援型農業(CSA・Community-supported Agriculture)を通じて、消費者自らが産地やサプライヤーを育てることになるだろう。

 繰り返しになるが、日本の消費者は、もっと「自ら判断し、自ら行動する存在」であってほしい。そして、事業者は、堂々と情報を開示し、真のコンプライアンスを守る、これが商売繁盛の近道、王道と心得なければならない。

 「食の安心」に対して、しばしばSecurity とか Reassurance という言葉があてられるが、本当は、「Trust」ではないだろうか。

  
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