「MAGA候補」バンス
中西部オハイオ州の共和党上院予備選挙において元海兵隊員で、作家でもあるベンチャー投資家のJ.D.バンス氏が勝利を収めた。バンス氏は貧しい白人労働者の生活を描いた『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』(光文社)の著者である。
16年米大統領選挙において、バンス氏は「自分は決してトランプ支持者ではない」「彼(トランプ氏)は不快だ」とトランプ前大統領を批判した。だがバンス氏は22年4月16日自身のツイッターに、トランプ氏から推薦を得たことを発表して一気に支持率を伸ばした。
米FOXニュースの世論調査によると、22年3月時点でバンス氏の支持率は11%で3位であった。ところが、トランプ前大統領から支持を得た後に行われた同調査(同年4月20~24日実施)では、バンス氏は支持率を23%に上げ、2位の元州財務長官ジョシュ・マンデル氏を5ポイント引き離して1位に躍り出た。トランプ氏の支持がゲーム・チェンジャー(悪い流れを変える出来事)になったことは確かだ。
長男のドナルド・トランプ・ジュニア氏も動いた。同氏はバンス候補の集会に足を運び、支持を訴え、トランプ氏推薦の候補というメッセージを送り続けた。バンス氏が正真正銘の「MAGA候補」であるという印象をトランプ支持者に与えることに成功したのだ。MAGAとはトランプ氏のスローガンである「Make America Great Again(米国を再び偉大にする)」である。
トランプ氏は今回の中間選挙で支持者に向かって「彼はMAGAだ」「彼はMAGAではない」と述べて、候補者を敵と味方に2分して分断を煽っている。