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2022年6月21日

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秋田圭太 (あきた・けいた)

御堂筋法律事務所弁護士

2011年中央大学法学部卒業、13年東京大学法科大学院修了。知的財産・IT関連業務、建築・不動産関連業務等の企業法務全般のほか、上場企業への出向経験を生かし、新規事業や新しい分野の法務を取り扱う。

理美容所以外で理美容サービスができる条件とは?

 出張理美容では、なぜ、保健所の確認を受けた理美容所でない高齢者施設や自宅で施術できるのか。法は、理美容所以外での理美容サービスの提供については次の例外を認める。

①疾病その他の理由により、理美容所に来ることができない者に対して理美容を行う場合
②婚礼その他の儀式に参列する者に対してその儀式の直前に理美容を行う場合
③前二号のほか、都道府県(保健所を設置する市又は特別区)が条例で定める場合(例えば、東京都では、山間部等の理美容所のない地域に居住する者、社会福祉施設等の入所者、及び出演直前の演劇出演者に対して行う場合を定めている)。

 つまり、法は、疾病などの健康上の問題や婚礼などの儀式における時間的制約により理美容所に来ることができない人に、理美容所以外でサービスを提供することは認めるが、このような理由がない人には、必ず理美容所に来ることを義務付けている。

 例えば、産業競争力強化法によるグレーゾーン解消制度における回答によれば、結婚式当日の新郎新婦に対するメイクは儀式直前の理美容として理美容所以外(式場等)でできるが、結婚式前日以前のリハーサルメイクや挙式せずに写真撮影を行うフォトウエディングでは、時間的制約を伴う儀式直前ではないという理由で、理美容所以外でメイクできないとされている。行政は、理美容所以外での理美容サービスの提供に対して極めて厳格な姿勢を示している。

 一方で、近年、この規制については、利用者のニーズを踏まえて実質的な規制緩和の動きがあった。

 2015年6月30日閣議決定の規制改革実施計画を受け、厚労省は、「出張理容・出張美容に関する衛生管理要領」を指針として活用し、必要に応じて、各自治体が条例等の制定に努めることを留保しつつ、骨折、認知症、障害、寝たきり等の要介護状態で理美容所に来ることが困難な場合も、「疾病その他の理由により理容所、美容所に来ることができない場合」に当たるとの見解を示した。

 疾病などの場合だけでなく、要介護状態にある高齢者等を対しても出張理美容サービスを提供できることが明確となったのである。

出張理美容のサービス拡大と法の壁

 現在の出張理美容は上記厚労省の見解を前提として提供されており、各事業者は、衛生管理要領を参考として衛生を確保した上で、理美容所以外において理美容サービスを提供している。この出張理美容は確実に認知され、需要を拡大させている。

 リクルート ホットペッパービューティーアカデミーの訪問理美容サービスに関する利用実態調査2021によれば、ケアマネージャーにおける訪問理美容認知率は97.2%、担当要介護者等の利用経験率は64.5%であり、要介護者等においては出張理美容が定着してきている。また、高齢者施設だけでなく、要介護者等の自宅に対する出張理美容も増加傾向にあり、出張理美容利用者の範囲は拡大傾向にあることがうかがわれる。

 一方で、現在の出張理美容の利用者は、あくまで健康上の問題で理美容所に来ることができない人に限られており、感染症等の感染リスクを避けたい又は都合の良い時間・場所で理美容サービスを受けたいといったニーズを取り込むことは法制度上困難になっている。

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