2022年12月10日(土)

ビジネスと法律と経済成長と

2022年6月21日

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秋田圭太 (あきた・けいた)

御堂筋法律事務所弁護士

2011年中央大学法学部卒業、13年東京大学法科大学院修了。知的財産・IT関連業務、建築・不動産関連業務等の企業法務全般のほか、上場企業への出向経験を生かし、新規事業や新しい分野の法務を取り扱う。

 近年、飲食業界では配達サービスが普及している。配達というサービスに対する対価(手数料)を追加で支払ってでも自宅でお店の味を楽しみたいというニーズが存在したため、配達の形式や責任主体、委託料などさまざまな議論・問題があるものの、これを取り込む形で新たなビジネスが生まれたのである。

 同様に、理美容師による訪問というサービスに対価を支払ってでも、理美容所ではなく、好きな時間・場所で、理美容サービスを受けたいというニーズが存在するかもしれない。仮にこのようなニーズが大きなものであれば、飲食における配達サービスと同様に、利用者と理美容師を繋ぐビジネスや訪問サービスという新たなサービス区分が発生することで、理美容業界全体の市場拡大が期待できるのだが、前述のとおり、現在の法規制を前提とすれば、このようなビジネスを広く展開することはできない。

法の目的に則した規制制度と運用の検討を

 そもそも、法の目的は公衆衛生の向上にある。

 現在の出張理美容にしても、リハーサルメイクにしても、衛生確保に支障がなければ、理美容所以外での理美容サービス提供を全面的に禁じる必要はないかもしれない。

 前述した規制緩和では、利用者のニーズ等を踏まえて検討した結果として、衛生管理要領を活用することで、衛生を確保することを条件として、疾病以外の者に対しても出張理美容サービスが提供できるとの見解が明らかにされた。同様に、法令又は行政による運用において、出張理美容における衛生状況を確保するための具体的な基準を整備し、事業者がこれを遵守することによって、法の目的である公衆衛生の向上と確保ができれば、健康状況や時間的制約といった利用者側の事情にかかわらず、サービス提供を認めても法の目的に反しないであろう。

 もちろん、法は、理美容所での理美容サービスの提供を原則としており、これ以外での施術はやむを得ない場合にのみ認めるべきとの立法論や、事故が生じた場合、理美容所での施術であれば容易に状況を把握できるという利点の存在を軽視することはできない。そのため、単に衛生を確保するための基準を整備して、事業者に遵守させれば足りるという簡単な議論で決着がつく問題ではない。

 ただ、現在の出張理美容サービスが、今後も、衛生管理要領を活用することで、衛生を確保しながら、問題なく理美容サービスを提供できるのであれば、公衆衛生の向上という法の目的に反することなく、理美容所以外での理美容サービスの提供を認める一つの根拠になり得るだろう。

 冒頭の報道は、理容と美容の境界に端を発した問題に過ぎないが、理美容所以外における理美容サービスが円滑かつ公衆衛生を確保して提供できるのか、そのようなサービスを求めるニーズがどれほどあるのかという観点から、引き続き注視していきたい。

  
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