2024年7月23日(火)

田部康喜のTV読本

2022年6月26日

怪獣モノとは一線を画した方針

 ナレーションは、金城の相棒となった、上原(佐久本)。彼は、当初は次のようなやりとりに嫌気がさしていた。「自分はひねくれ者で、子どものような雰囲気に入れなかった」

 円谷一 「上原君も沖縄出身だよね。金ちゃん(金城)って、沖縄人というより金星人だよね。上原君、どんどん怪獣もの書いてみない。テレビ局から要求がどんどんきていてよ」

 金城は、一を兄のように慕っていた。上原はもともと、沖縄の現実をえぐるような脚本家を目指していたが、怪獣ものを手がけるうちに、その魅力にはまって、生涯を子ども向けのアニメなどの脚本に捧げることになる。

 円谷プロは「ウルトラQ」シリーズの大ヒットを受けて、新たなヒーローをフィーチャーした怪獣ドラマを作ることになった。「シンウルトラマン」の冒頭にサイケデリックな渦巻きが登場するのは、「ウルトラQ」のタイトルバックである。

 その制作の基本方針について、円谷英二は次のように語っていた。

 「血まみれや、きたないリアリズムは他の映画がやってくれる。子どもたちが夢をみられるようなものをつくってくれ。ハリウッドのSFメルヘンに負けないような」と。

 円谷一(青木崇高)のニューヒーローのイメージは、「スーパーマンをしのぐスーパーヒーローの登場、しかもオールカラーでやる」という、当時のテレビ界では画期的なアイデアだった。

 金城(満島)が中心となって、円谷プロの若者たちが、新ヒーロー「ウルトラマン」のコンセプトづくりが始まった。身長は40メートルの巨人。宇宙人の設定で、怪獣を殺しはしない。海や山、宇宙に運んでいってしまい、害を与えないようにする。

 ウルトラマンが地球を救うとして、それはなぜなのか? 地球に対する「愛」のためにか?

 彼らの議論が煮詰まった瞬間に、ウルトラマンは「客人(まれびと)」ではないのか、という声があがった。「客人」とは、民俗学者の折口信夫が説いた。遠方からやってきた人を遇するのは、それがなにかよきことをもたらすからではないか。

 若者たちは考えた。「ウルトラマンは、未来の沖縄の客人だ。悪い客人だっている」

 【証言】監督・満田かずほ
 「ウルトラマンの最初の『用意』に始まったときうれしかった。カメラのアングルからポジションも覚えている」

 【証言】円谷英二の三男・あきら
 「金城さんは豪放磊落。上原さんは、神経質なタイプだった」

 ウルトラマンシリーズの第1回は、脚本を大御所に依頼したが、金城が全面的に書き直すことになった。これで、ウルトラマンの輪郭ははっきりとした。

 「地上に平和をもたらして去っていく」「宇宙のかなた光の国からやってきた」「ベータカプセルを高く掲げることで、巨大化する」

 第1回は、大ヒットした。その後もヒットを重ねていく。その過程で、ウルトラマンは怪獣と闘いこそすれ、「殺す」わけではない。シリーズ「まぼろしの雪山」がその例である。雪山に取り残された女の子を、怪獣ウーが襲う。しかし、ウルトラマンはスペシューム光線で粉々にすることはしない。怪獣は消えていくのである。

 【証言】監督・樋口祐三(同作の監督)
 「ウーは、雪女のイメージがあると思う。沖縄の人だったから、女の子の鮮烈なイメージがあって、ウーを粉々にするのが、金城さんは嫌だったのではなかったのか。金城さんは多感な人だった」


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