2024年12月11日(水)

プーチンのロシア

2022年7月4日

新型コロナが大きく影響

 第二次大戦中のソ連と同じ制度をプーチン氏が復活させた背景に、ロシアの人口減と国防への懸念があったことは容易に想像できる。

 ロシアがウクライナに全面攻撃を仕掛ける直前の今年1月末、ロシア連邦統計局は衝撃的な発表を行った。ロシアの人口が2021年に、移民を除きソ連崩壊以降で最悪となる100万人超が減少したという内容だった。統計局によると、ロシアでは20年も人口が50万人以上減少しているという。

 背景には、新型コロナウイルスに対するロシア政府のずさんな対応があった。露当局は独自開発したワクチン「スプートニクV」を、20年8月に世界に先駆けて承認。しかし、十分な検証がなされないまま承認されたと批判を浴び、国内でも接種拒否者が相次いだ。22年6月末時点でも、1回以上の接種を受けた国民の割合は約56%にとどまっている。

 今年1月末時点の報道によれば、露政府は新型コロナによる累計死者数は約33万人だとしていた。ただ、これは病理解剖で新型コロナが死因と特定された人数で、統計局は倍の66万人超が死亡したと表明していた。人口規模がほぼ同じの日本での1月末時点での死者数は約1万9000人で、いかにロシアのコロナ死者数が多いかが分かる。

ソ連崩壊後、減少から盛り返しを見せていた人口

 新型コロナで悪化した人口の減少傾向は、今後さらに深刻化しかねない。ウクライナ侵略を背景にロシア経済の急激な悪化が見込まれ、出生率が低下する可能性が高いからだ。

 ロシアの総人口はソ連崩壊直後の1994年から急減し、95年を除いて2009年まで一貫して減少が続いた。

 90年代のロシアは、急速な市場経済化を図った結果、スーパーインフレを引き起こし社会・経済が大混乱に陥った。失業者が増大し、多くの人々の生活は底辺に押し込まれた結果、平均寿命が急激に低下。94年時点の男性の平均寿命は、実に57歳にまで落ち込んでいる。さらに社会不安から出生率も急低下し、人口減をもたらした。

 2000年代はロシアの主要輸出品である原油価格が上昇し、経済が安定したことから、平均寿命は2000年代後半から回復しはじめた。社会不安が解消され、出生率も高まったことから、人口減少はいったんは止まった。

 しかし、移民を除いたロシアの人口は、16年から再び減少に陥る。これは1990年代生まれの出産適齢期の女性の人口が減少したことが要因だったが、それだけではなかった。ロシアでは15年以降、女性が一生の間に産む子供の数の平均である合計特殊出生率が減少に転じているが、その背景には、経済の停滞があったと指摘されている。


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