2022年10月7日(金)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2022年7月9日

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冷泉彰彦 (れいぜい・あきひこ)

作家・ジャーナリスト

ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。近著に『「反米」日本の正体』(文春新書)など。メールマガジンJMM、Newsweek日本版公式ブログ連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

 個人的な話で恐縮だが、ここまで記しながら涙を止めることが難しくなった。RFKと安倍晋三氏は、政治的信条は全く異なる。けれども、国政に関与して犠牲になった方に対して、主権者が自発的にそして誠実に哀悼の意を捧げる姿勢は、限りなく胸を打つ。また同時に、恐ろしい時代、恐ろしい事件の渦中にあっても、人間性というものの中にある明らかな希望を示していると思う。

 更に個人的な感慨で恐縮だが、国民の誠実な弔意には希望は見出せても、故人はもう還ることはない。そう考えると、改めて深い悲しみが湧き出てきて、押し止めることができないのである。

求められる国葬と4首脳参列への根回し

 第一次政権が特にそうだが、安倍氏の政治姿勢、特に歴史修正の姿勢に関しては、筆者は100%賛同するものではない。第二次政権に関しても、アベノミクス「第3の矢」が守旧派の妨害によって成果を残せなかった点について、残念な思いは残った。

 けれども、安倍政権の、そして政治家安倍晋三氏の功績としては否定できないものが数多くある。何よりも超リベラル的な経済政策を実行し、小泉純一郎政権が中断した対中首脳外交を機能させ、保守派を説得して日韓合意や譲位改元を円滑に実施し、また前述したように日米相互献花外交を実現した。その意味で、安倍政権は、とりわけ第二次政権については保守政権というよりも、中道実務政権という評価が可能であると考える。

 いずれにしても、日本国の内閣総理大臣という重責を通算で8年8カ月も担われた方である。そして、政治家として文字通りの殉職を遂げられたというのも間違いのない事実だ。

 投票日直前という難しいタイミングではあるが、可能な限りの厳粛な弔意を持ってお見送りをするのが正しいと思う。政治家の功績には、功罪相半ばするのは避けられないが、正当な評価というのは、騒がしい言論の中では生まれないということもある。

 あくまで個人の意見だが、安倍晋三氏に関しては、国葬を持って見送るのが正当であると考える。ただし、政治的に中立であることが肝要であり、国葬(もしくは待遇)という措置を岸田文雄首相が発表されるのは投票所が閉まった後が望ましいと思う。

 更に欲張ったことを申し上げるのであれば、国葬(となった場合に)の場に、バイデン、プーチン、ゼレンスキー、習近平の4人に来ていただくということは出来ないだろうか。広島サミットも結構だが、岸田首相には一世一代の根回しによって、この4人の参列をアレンジしていただけないだろうか。

 弔問外交で一気に停戦などというのは高望みかもしれない。だが、お互い言葉は交わさなくても、この4人が静謐な時間空間を共有することで、近い将来の和平の布石になるのであれば、それが安倍晋三氏への何よりの供養となると思う。

  
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