2024年6月17日(月)

デジタル時代の経営・安全保障学

2022年7月15日

 筆者はこうした現状を危惧し、あるメーカーの役員に外部からアクセスする際の認証機能を強化することや、せめて初期値のパスワードを個体別のシリアルナンバーなどにするなどの改善を要求したことがあるが、対策は進んでいないようだ。これら脆弱性の存在するインターネット上の装置を簡単に探し出す検索ツールも出回っていることから、オフィス設備のセキュリティーは深刻だ。

経済安全保障のジレンマ

 この草案が実施されれば複合機のノウハウが中国に移転するのは時間の問題だろう。海外勢は競争力を失ってしまい撤退を余儀なくされる。

 中国の大きな市場を失うか、市場の大きさに目を瞑って草案を受け入れ、事業そのものを失ってしまうのか――。複合機メーカーは、頭を悩ませているに違いない。中国の「セキュリティー基準」という国家戦略にはまってしまう前に賢明な判断がなされることを願う。

 一方で複合機のユーザーは、今回の報道を機に、複合機のセキュリティーについて点検を行なってはどうだろうか。オンライン会議の普及やペーパーレス化が進むなかで、書類を印刷するケースは減ってきていると思われるが、重要な機密情報にかぎって印刷するという企業も少なくないのではないか。官公庁も例外ではないと思われる。役員や政治家がまだまだ紙で要求するケースは多いように思う。

 であれば複合機のセキュリティー確保は喫緊の課題である。複合機をネットワーク機器として認識し、総務部の管理からシステム部へ移管している企業は、どれほどあるだろうか。今一度、複合機のセキュリティが万全かどうか点検されることを推奨する。

 
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