2022年8月14日(日)

デジタル時代の経営・安全保障学

2022年7月15日

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山崎文明 (やまさき・ふみあき)

情報安全保障研究所首席研究員

明治大学サイバー研究所客員研究員。元会津大学特任教授。1978年、神戸大学海事科学部卒業。損害保険会社を経て大手外資系会計監査法人でシステム監査に長年従事。システム監査、情報セキュリティー、個人情報保護に関する専門家として、政府関連委員会委員を歴任。

 中国が複合機などのオフィス設備を調達する際に、中国国内での設計・開発を求める新たな国家規格を策定していると、読売新聞が7月3日に独自ニュースとして伝えている。

(A stockphoto/gettyimages)

 中国の情報セキュリティー技術に関する国家規格を所管する「全国情報安全標準化技術委員会(TC260)」が策定した「情報セキュリティー技術オフィス設備安全規範(草案 2022年4月16日)」に、中国政府が入札などで購入するオフィス設備について「(中国)国内で設計・開発・生産を完成すべきだ」と明記しており、オフィス設備の安全評価についても「国内で設計・生産が完成されていることを証明できるかどうかを検査する」と規定していることがその根拠としている。

 「全国情報安全標準化技術委員会(TC260)」は国務院(中央政府)の下部組織である国家市場監督管理総局のもとにある組織。メンバーには習近平国家主席の直轄でサイバーセキュリティーを所管する共産党中央インターネット安全・情報化委員会弁公室や工業情報化省、公安省の幹部ら中国共産党員で構成されている。

 データ通信や暗号、パスワードなど7つの作業部会があり、複合機を含むオフィス設備に関する規格は「情報セキュリティー評価」の作業部会で議論されている。新たな規範は、政府調達のみならず、通信や交通、金融など社会インフラ事業者の調達にも適用されるという。

海外企業に対する配慮が消えた新規格

 16年11月、中国国家規格に関する解説書が公表された。中には、「情報セキュリティー標準は、サイバースペースにおける国際競争の戦略的な高みとなっている。特にオフィス機器の基準と管理方針は、産業に大きな影響を与え、海外企業の強い反発を招くことは必至であろう」としている。

 海外のオフィス機器情報セキュリティー関連規格を具体的に分析、参照、吸収し、Hardcopy Devices and Systems (IEEE 2600-2008コピー機器の国際規格)などの国際規格や先進的な外国規格の採用度合い、類似の国際規格や外国規格水準との比較、あるいは試験済みの外国サンプルやプロトタイプの関連データと比較し、試験評価方法を立案したとしている。

 海外企業の強い反発を意識して、「技術要素の面で国際的に権威ある標準をカバーすると同時に、オフィス機器の情報セキュリティー管理に関する国家政策の要求を実現するため、技術の中立性維持を前提に、多くの拡張要求を提示している」と解説していたのだが、今回の草案では、そうした海外の企業に対する配慮は全く消えてしまっているのだ。

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