2024年4月20日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2022年7月16日

 暴力によって抗議デモは粉砕されたが、その時のインパクトのある動画と写真によってニュースが広がり、政府に対する圧力となって事態解決へとつながる。その意味で殴られることは事態解決のカードを手に入れることになるわけだ。

帰ってきた胡錦濤時代

 自分たちの要求を通すためには、ネットとメディアを使って劇場型の大騒ぎを作り上げなければならない。

 俗に「網絡維権」(ネットでの権利擁護活動)とも呼ばれる手法だが、2000年代後半から2010年代初頭の胡錦濤時代後半にかけて大流行した。当時は毎週のように、相当規模の大騒ぎが報じられていて、それらの情報を追いかける筆者もヘトヘトだったことを覚えている。

 習近平時代になり、「網絡維権」は減少していく。その理由だが、第一に検閲やメディア統制の高度化が理由としてあげられる。社会問題に関するニュースは人の目に触れないようにコントロールすることが徹底されていった。

 加えて、騒ぎにならないよう違法な投資案件に対して、早めの手当が心がけられたという面も見すごせない。P2P金融(金融機関を介さずにインターネット経由で貸し手が借り手に直接融資する仕組み)は最盛期には3000社以上が参入するホットビジネスとなったが、政府は全面禁止した。ビットコインなどの暗号通貨も同じく、詐欺の温床として完全に禁止された。先回りして対処したわけだ。

 こうして人前から消えたはずの「網絡維権」が、なぜか今、復活している。河南省の村鎮銀行だけではない。昨年秋には広東省広州市で、大手不動産デベロッパーの恒大集団が販売した金融投資商品の返済が遅れているとして、抗議デモが行われた。世界的な大事件となった恒大集団のデフォルト問題が浮上したきっかけだ。

 中国政府は早め早めのリスク対応を行っていたが、それでもすべての怪しげな投資を排除できていたわけではない。これまで水面下にあった問題投資案件が浮上しつつある。それはなぜか。恐らくは不動産市場に問題の根幹がある。


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